• 2020/12/25

    高橋 千枝子

ジェンダーレスとマーケティング

『ジェンダーレス』とは生物学的な男女の性差を前提とした社会的性差、文化的性差をなくしていこうとする考え方です。ジェンダーレスの流れが大きくなるのは、伝統的家族形態を前提とした考え方のみで生きていくことが難しくなりつつあるからかもしれません。

 

ジェンダーレスは『個性の尊重』

近年は、保母を保育士、看護婦を看護師、営業マンを営業担当者など、性別に依存しない呼び方に変えたり、女子学生の制服にスラックスが選択できる学校が増えるなど、着実にジェンダーレスは進んでいます。こうした動きは、男性であること、女性であることを気にしない若者が増えていることを示しています。2000年代ぐらいまでは、男性が車の購入を目標にしたり、女性が真っ赤な口紅やロングソバージュにするなど、男性は女性に、女性は男性に好かれたいという想いが行動に表れ、それが流行や消費を生み出す大きな起爆剤となっていました。

しかし、今の若者はそんな見栄を張りません。その背景には、男らしさ、女らしさの先にあるものが見えづらくなり、まずは「自分らしさ」を守りながら個人で自立して生きていかないと生き残れない、という現実があるのかもしれません。

ジェンダーレスを受容する社会の動きに、マーケットも大きく変化しています。

ひとつはメイクする男性や逆にメンズアイテムを身につける女性が増えており、着心地の良さや社会に貢献するエシカルな服といった、性別とは異なる商品選びの新たな視点が生まれています。さらに、男女兼用ブランド(ユニセックス)が誕生するなど、マーケット自体の変化、さらにはLGBTの認知・理解が深まったことによる『レインボー消費』と呼ばれる新たな市場も誕生しています。

ライフデザインを能動的に描こう

生物学的な男女の性差を前提としたマーケティングから、デザイン、世界観、個性といった『ベネフィット』がないとモノが売れない時代が到来しています。LGBT関連消費はもともとジェンダーに縛られない消費行動なので、そうした人たちに素敵だと思ってもらえる『何か』を持つことが、成功する商品やサービスになるかのカギになるでしょう。

一見すると市場がニッチ化する動きに思われますが、実際には自分が望むライフスタイルを自由に選択できる時代の到来を意味し、保守的と言われる日本女性が能動的に人生をデザインする契機だと言えるでしょう。

さらにジェンダーレスは自らを抑止していた足かせが外れ、『個人の自由』が尊重される社会です。そうした社会で働き、生き残るためには、学生の間に多様な人々と関わることを通じて、社会には自分とは異なる考え方や価値観を持つ人が多く存在する事実を受け入れることが、ビジネスの世界で活躍する上で必須の素養となるでしょう。

本学の学生は皆さん真面目です。そのせいか、まだ自分らしさよりも堅実なライフプランを描く学生が多い。もっと本気で学びたいことややりたいことを探し、見つけてほしいです。例えば、マーケティングでのアイディア出しとか、パソコンでイラストを作るとか、お金の計算とか…あなたがワクワクするモノやコトは必ずあるはず。いろいろな授業や実践学習、学外活動の中で自分の『一番ワクワクすること』を見つけて、そこに時間とエネルギーを集中しましょう。そこで得た経験や学びこそが、『本当になりたい自分がいる』未来に導いてくれる指針となるはずです。

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