• 2020/11/27

    鈴木 基史

ビジネスマインドを身につける

教えている私が言うのもなんですが、会計学は地味な科目です。しかし会計学のスキルは、マーケティングや統計学と同じビジネスマインドのひとつであることは間違いありません。会計学を学問として学んでもらう以外に、会計を学ぶことで何が見えてくるのか、自分のキャリアにとってどうプラスになるのかも一緒に伝えなければならない、と考えています。

会計は企業を客観的に見る視点のひとつ

会計学はビジネスマインドの中でも重要スキルのひとつとして認識されていますが、それは会計が法律によって定められたルールに則って会社の情報を伝える手段のひとつであり、物事や企業を客観的に見る学問のひとつだからです。

確かに学生にとって、会計学は難しいかもしれません。しかし企業会計の数字は企業のコア情報で、その数字からしか見えない情報が多く含まれています。しかし、最初からそこを教えようとすると、会計を嫌いになるだろうからしません(笑)。まず世の中の情報に興味を持ってもらえれば、きっとその先にある会計情報にも興味を持ってもらえると思っています。

最近の企業は、決算情報に加えてIRと呼ばれる情報を自主的に公開しています。また、決算情報と同格の扱いでSDGsやESG投資といった社会的課題解決の取り組みについても情報発信を始めており、会計情報も情報戦略が求められる時代になっています。

大学では会計学や簿記を教えていますが、簿記の検定試験合格に特化した教育をしようとも思いません。なぜなら、そのような授業は専門学校となんら変わらないからです。そして何より、大学の授業で会計学という枠に学生の皆さんを押し込もうとすると、ほとんどの学生の皆さんにとって面白くない授業が続くことになります。しかしながら、会計学がビジネスマインドにおける重要スキルあることも間違いないので、まったく学ばないでいると社会に出た時に苦労することになります。私としてはこのジレンマと戦いながら会計学を教えています(笑)

まずは現代社会のダイナミックな動きに興味を持つ

私の授業では、新聞記事や雑誌のコラムなどを取り上げ、まずはダイナミックな現代社会の動きを感じ取ってもらうところから始めます。例えば、A社が業績を伸ばしたのは、どのような経営戦略やマーケティング戦略に由来するのか、どのような企業環境や市場環境が影響したのかなどを解説すると同時に、それは経営戦略の学問に関わることなのか、マーケティングの学問に関わることなのか、社会心理に関わることなのかを学生たちに紹介しています。そしてその詳細を知りたくなったり興味を持ったなら、それぞれ専門の先生に聞いてもらうように話しています。

せっかく各分野の専門家が集まる大学で学んでいるのですから、各分野の専門家である先生方の解説が一番わかりやすいし正しい内容のはずです。決して私が楽をしたわけではありませんよ(笑)。もちろん決算予測やIRといった会計的切り口で、その記事に興味を持ったなら私の領域です。企業や社会の動きがどのように会計情報に映し出されているのか、といった説明をできるだけわかりやすく伝えるようにしています。

こうした授業は、ひとつの物事や会社を見る時に、会計、経営戦略、マーケティングなど、さまざまな視点や切り口から見てほしいという想いから生まれたものです。利益や損失がいくらかという数字を読み取るのはもちろんですが、その数字の原因や理由を理解しないと、正しく数字を見たことにはならないから。そして、それこそがビジネスマインドなのです。

学生たちに伝えたいのは、物事を総合的、俯瞰的に見る方法です。本学の学生たちもこの物事を俯瞰する力や多角的に見る力を磨く必要があります。なぜなら、そうしないと物事の本質は見えてこないからです。それに加えて、自分で自分の可能性を狭めることなく最大限に広げるためには、自分を俯瞰して見る広い視野が必要だからです。

物事を多角的、俯瞰的に見る力を身につけてほしい

現代の日本社会は、働き方改革や男女共同参画の推進などが叫ばれ、すぐには解決できない人口減少が進みつつあります。そんな社会で活躍できる人材として、大学は『課題解決型』の人材を育成する必要があるでしょう。

直接人口減少を止めることは私たちのような一市民には難しいですが、そこから生じる課題を解決して負の連鎖を止めることはできます。例えば、こうした負の連鎖を止める方法のひとつとしてCSV(共通価値の創造)という考え方があります。CSVとは『経済的価値を創造しながら社会的ニーズに対応することで、社会的価値をも創造する』という考え方で、すでにCSVに取り組んで成果を挙げている企業や地方自治体が数多くあります。そして、CSVを実行するのに必要なのが『課題解決型』の能力を備えた人材なのです。

これまでの経済活動は自社の利益を追求するだけでしたが、これからの時代は社会課題を解決することで社会に貢献しながら、自らも利益を得られないと生き残れなくなるでしょう。そして、自分たちを社会の一部として俯瞰的に見る広い視野がないと、こうした取り組みを成功させることはできないのです。

これからは、何かと何かを結びつけることでイノベーションを起こす時代となり、それはひとりでは絶対にできません。常に社会を多角的、俯瞰的に見て、社会の課題解決とビジネスチャンスをつなげていかないければならず、そのためには広い視野と多角的に物事を見る目が必要です。本学の学生の皆さんは、ぜひ広くて大きな視野を大学生活の中で身につけてもらいたいと思います。

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