• 2020/11/06

    杉井 俊介

伝統的価値観にみる「男女の役割」について考える

世界経済フォーラムが2019年に報告したジェンダーギャップ指数によると、日本はG7の中で圧倒的最下位で、中国や韓国よりも順位が下になっています。中でも、賃金格差や管理職数、専門職数、国会議員数で男女差が大きいと指摘を受けています。最近では、医科大学の入試で女性差別があったのではないかというニュースが話題になりました。また、男性の育休取得率の低さのように男性が性差で不利を受けるケースも耳にします。

日本社会に残る「伝統的価値観」

以前、国の男女共同参画局が実施したアンケートで、「社会において男性が優遇されている原因」という質問について、「社会通念・慣習・しきたりなどが根強いから」という回答が最多でした。これは今もなお人々の間に「男は働き、女は家庭を守る」という伝統的価値観が根強く残っていることを示唆しています。

実は、日本で男女平等が求められるようになったのは第二次世界大戦後のこと。しかし日本の経済が大きく成長したバブル期は、まだ専業主婦の存在を大前提として男性がフル稼働する考えが根強く残っていました。夫婦の共働きが増えている現在でさえ、就職活動において、男性は伸びしろがあるかどうか、女性は即戦力となるかどうかで、採用判断をしている会社も多いと聞きます。これは「女性は結婚したら会社を退職して家庭に入る」という伝統的価値観に基づいた意識が今も根底にあるからに他なりません。

「伝統的価値観」を変えようとする動きも活発化

グローバル化が進む中で日本社会を豊かにしていくには、伝統的な価値観に縛られない生き方や考え方を大切にし、性差で区別するような伝統的価値観を変えていくことが必要です。さらには「こうあるべき、こうでなければならない」といったステレオタイプ的発想から脱却し、お互いをひとりの人間として尊重する考え方が必要ではないでしょうか。もちろん悲観的な状況ばかりではなく、改善しようする動きもあり、実際に徐々にではありますが改善されつつあるのも事実です。

例えば、公務員に限定すれば、以前は国家公務員で女性の割合は25%程度でしたが、現在は30%を優に超え、さらに一般職に限定すれば40%近くまで増えています。

さらに政府は、民間企業に対しても管理職において女性が一定割合まで増えるよう、さまざまな取り組みを進めています。性別や年齢と関係がない成果主義の評価制度や女性役員の登用増加など、伝統的価値観に囚われない取り組みを加速させている企業も決して少なくありません。

また、法律面においても男女雇用機会均等法をはじめとする女性の活躍推進をサポートする法律が複数立法化されています。しかし、その法律をきちんと機能させ、めざす世の中にしていくのはこれからの話で、まだ理想と現実に乖離があるのも事実です。

伝統的価値観に流されず、自分の将来像を描こう!

先日、授業の中で、本学でトランスジェンダーの学生受け入れに賛成か反対かのアンケートを実施したところ、8割以上の学生が賛成でした。本学の学生は固定観念に囚われない自由な考え方の持ち主が多いようです。他大学の様子を見ると、お茶の水女子大学や奈良女子大学といった国立の女子大学がトランスジェンダーの学生を受け入れると表明しており、社会は着実に変化しています。

社会を変えて行くには、時間は掛かりますが、社会全体が「こうでなければならない、こうあるべきだ」というステレオタイプ的発想から脱却することが必要です。そのためには、まず一人ひとりが伝統的な価値観に縛られない生き方や考え方を持つことが大切だと考えます。確かに現在の社会にはまだ伝統的価値観が根強く残っていますが、決して悲観的になる必要はありません。

本学の学生を含め、若い人たちに伝えたいことは、まず自分の将来像をしっかりと描いてもらいたいということです。そこで「男性・女性としてこうしなければならない」「男性・女性としてこうすることが求められている」といった価値観に流されず、自分が本当に何をしたいのかを考えてください。そして豊かな発想力を持って、自分自身を表現し、行動してください。

そうすれば、きっと未来は明るいものになっているはずです。

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