• 2021/05/10

    山下 紗矢佳

知らないともったいない!中小企業の世界

中小企業と聞くと、女子学生の多くが「関係ない」や「縁がない」と考えるかもしれません。しかも、「給料が安い」や「労働環境が悪い」など、中小企業をよく知らないために抱くネガティブなイメージを理由とする人が多いようです。私自身は中小企業の研究を進める中で、賃金が高くて大企業よりも働きやすい労働環境を提供する中小企業に数多く出会ってきましたし、不況下にあっても女子学生の採用に対して積極的な中小企業を数多く見てきました。ここでは皆さんの知らない中小企業の世界についてご紹介します。

中小企業こそ質を重視

まず、企業にとって大切なことは規模より質です。

中小企業はしばしば大企業との対比による「格差」や「違い」が語られます。しかし、給料が良かったり、業績が良い中小企業はたくさんあります。しかし、規模や給料より大切なことは、強みにあたる『コア』を備えた会社かどうかで、良い会社ほど強みが明確です。こうした会社は、経営者だけではなく社員一人ひとりが会社の強みや考え方、向かっている方向を理解しており、その結果、主体的に動ける組織になっています。

大企業だと部署が多く、本業がわからなくなっているケースも多々見受けられます。それは中長期的な視野で見れば、会社の強みを失わせる可能性があります。中小企業は経営リソースが少なく、一度に多くの事業に取り組むことはできません。その分、強みを磨くことで生き残ってきました。そう考えると、大企業も中小企業も質が重要で、単に中小企業だからダメと決めつけるのは非常に危険な議論だと言わざるを得ません。

また、女子学生の場合は地元企業への就職意向が強いのが特徴ですが、武庫川女子大学がある兵庫県内でも、給料が良かったり、業績が素晴らしい中小企業がたくさんありますが、学生の皆さんはほとんど知りません。その理由は大きくふたつあって、ひとつは中小企業の多くがBtoBで、消費者ではなく企業を相手にビジネスをしている点。もうひとつは良い中小企業ほど退職者が少ないため、欠員が出た年度だけ採用活動を行う点が考えられます。逆に、ずっと募集ばかりしている企業は大企業も含めて注意をしましょう。

中小企業こそ日本のマジョリティ

実は日本企業のうち99.7%は中小企業です。皆さんがよく知っている企業の多くは大企業だと思いますが、それらは日本全体で見ればほんの0.3%に過ぎない部分に属しているということ。さらに言えば、日本では全従業者数のうち、6〜7割が中小企業で働いています。これだけ数が多いと、本当に良い中小企業を知らないのも当然なのかもしれません。さらに、その多くがBtoBの仕事がメインなので、学生の皆さんが直接製品やサービスに触れる機会が少ないケースが多いでしょう。良い中小企業の情報を得られないまま、就職活動に臨むのは非常にもったいないと思います。

これから大企業は副業を認める会社が増え、副業時代が到来するでしょう。深読みすると、これは大企業が社員の生涯補償をしないというサインのひとつと見ることもできます。フリーランスや個人事業主となれば、自分の力は自分で育てる必要があります。ただ皮肉なことに、そうした知識や専門性は中小企業の方が身につきやすい。さらに、将来の起業を目標とする人にとっても、中小企業で働くという選択肢は目標の実現に有利に働くでしょう。

中小企業こそ個人にあった働き方が可能

中小企業では人手不足の状況が続いていますが、ニュースではコロナ禍により就職先が減っていると報道されています。世間一般のニュースと個別企業の話には大きな差があります。中小企業経営者から「先生の生徒で良い人を我が社に紹介してください」とお願いされることも少なくありません。

日本社会では人材の流動化が進んでいますが、採用コストや教育コストも決して安くないので、中小企業側はできるだけ辞めて欲しくないと考えています。そこで社員一人ひとりの要望を聞きながら、可能な限り工夫や臨機応変な対応をしてくれることが少なくありません。例えば、子育て中の女性のために在宅勤務を許可したり、必要な機材を貸し出したり、あるいは持病があって長時間働けない人のために時短勤務やフレックス制を導入したり。きちんと仕事をしてくれるのなら臨機応変に対応したいと考える中小企業経営者は多いので、大企業ではできない個別対応ができるのも中小企業の良いところだと思います。

規模ではなく、自身にとって良い企業を見つけよう

どこで働くにしても、大切なのは働く意識です。例えば、金属加工の会社で働く社員が、金属加工が嫌になって辞めることは極めて希で、多くが社内の人間関係やモチベーションの低下を理由に退職していきます。自己を成長させるには、企業規模よりもあなた自身の想いが大切なのです。

では、本当に自分の想いに合った良い中小企業を見つけるには、どうすれば良いでしょうか。地元就職の志向が強い女子学生は、まず通学途上にある地元企業を調べてみましょう。就職活動が始まってから本当に良い中小企業を見つけることは難しく、早い段階から探索しておくことをおすすめします。

加えて、インターンシップなどを通じて、知らない人や環境に接する機会を作りましょう。武庫川女子大学経営学部では、実践学習プログラムなどを通じて1年生からさまざまな企業や団体で働くなど、さまざまな人に接する機会があります。そうした経験があれば就職活動の企業面接でも臆することがなくなり、あなた自身にとって本当に良い会社と巡り会えるチャンスが増えるでしょう。

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