• 2022/06/04

    山下 紗矢佳

女性も『起業』を選択する時代に

「起業」と聞いて、「自分には関係ない」と思っていませんか?これからの長い人生の中で、就職、転職、離職、非正規での就労など、キャリアデザインの描き方にはさまざまな方法が存在します。誰かが作った組織に属するのではなく、自分で自由に働くことができる働き方、それが『起業』です。今回は『起業』について知っていただきたいと思います。

女性の『起業』が増えている

2019年の東京商工リサーチ『第9回「全国女性社長」調査』によれば、 2018年の女性社長は全国で45万4,961人と、前年(41万1,969人)から10.4%増加しています。2014年(31万55人)と比べると、5年間で1.5倍に増えました。しかも、構成比でも2014年の11.5%に対し2018年は13.4%と1.9ポイントアップしており、女性社長は人数だけでなく比率的にも増えています。ちなみに兵庫県は女性社長数全国9位、女性社長比率全国10位です。

日本政策金融公庫の『2020年度 起業と起業意識に関する調査』では、これまで一類型として調査していた『起業家』を、事業に充てる時間に応じて『起業家』と『パートタイム起業家』の二つに分けて調査しています。『パートタイム起業家』とは事業に充てる時間が週35時間未満で、自分自身が『起業家』であると認識していない『意識せざる起業家』です。ここからも、近年は『起業』が身近な存在になりつつあることがわかります。

『起業』のスタイルはさまざま

女性に限らず、芸能人が所属事務所との契約を解消して『独立』したり、一般の方がユーチューバーとして活躍しているケースなど、これらはすべて『起業』です。しかしこうしたケースはごく稀で、多くは飲食店やサロンの開業、フリーランスデザイナーとして独立など、身近な『起業』がほとんどです。

女性の場合、飲食や介護、保育事業、美容事業といったサービス業での起業が多く、これは女性ならではの細やかな気づきや着眼点が大きな強みとなるためです。また税理士やネイリストなど、技能検定や資格を活かした起業も多いです。

女性の『起業』が増加している要因としては、まず世界的に見てもこれまでの日本は女性起業家が少なすぎたことが挙げられます。さらに、インターネットで気軽にビジネスを始めたり、店舗を構えなくても取引ができたり、ノマドワークが注目されたり、コロナ禍で在宅勤務が浸透していることなどが考えられます。

ただ、起業が成功するかどうかはやってみないとわかりませんが、失敗する確率を下げることはできます。最も大切なことは、自分なりの『成功』をあらかじめ定めておくことです。時間に縛られずにやりたいことをやって毎月1万円でも稼げれば良いのか、自分が食べていくのに必要な数十万円をなにがなんでも稼ぎたいのかなど、成功の位置づけを明確に定めておく必要があります。逆に、何がやりたいか分からない状態で起業すると、失敗する確率が高くなります。できること、やりたいことを明確にしてから起業しましょう。

『起業』で叶う自由な生き方

女性の場合、長い人生の中で仕事と家庭の両立やバランスを気にする人が多く存在します。まだまだ女性の家事や育児の負担が大きいにもかかわらず、『起業』という選択肢を選ぶ人も少なくありません。もちろん『起業』すれば、すべてが自己責任となりますが、自分と家族の時間の両方を大切にしながら自由なスタイルで仕事ができるようになったり、経済的な余裕を持てたりすることは大きな魅力でしょう。事実、最初に紹介した日本政策金融公庫の調査結果では、起業して良かった理由として「自由に仕事ができた」が最も多くなっています。

また「パートタイム起業家」については「29歳以下」や「女性」の割合がかなり高いのが特徴です。ここには特定のスキルを備えているフリーランスや学生起業家も含まれているため、比較的『自分の好き』を仕事にできている人が多く含まれていると考えられます。会社員という働き方よりも、『起業』で得られる自由や自己実現に大きな魅力を感じる人が増えているのでしょう。

人的ネットワークで自身をアップデートし続けよう

女性の働き方が大きく見直される中、若い女性たちの間では『起業』という選択肢が大きくなりつつあります。『起業』によって自分らしい『働き方』を実現することは、自分らしい『生き方』の実現につながります。

今回は若いうちに起業する話が多かったですが、実際には子育てを終えてから起業する人も増えつつあります。また、両親や親戚が事業を営んでいて、それを承継するケースもあるでしょう。そういう視点で見ると、起業は案外身近な存在という人が多いのではないでしょうか。

もちろん将来の『起業』を視野に入れて、大学での勉強や就職活動に取り組む人もいるでしょう。会社員として働きながら、副業的に小さく起業する人もいるでしょう。そうした皆さんは、人的ネットワークを広げることを意識しながら勉強や仕事に取り組むことをおすすめします。より多くの人と関わることで得られる知見や経験が、自分自身の視野や思考の範囲を広げてくれるからです。出産や子育てなどで社会との関わりが減ることで、視野や世界が狭くなりがちな女性は、多くの人と関わりながら自分自身をアップデートし続ける意識を持つようにしましょう。

これからの将来の選択肢のひとつに、『起業』を入れてみてはいかがでしょうか。

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