• 2022/11/23

    高橋 千枝子

女性活躍社会のカギ、フェムテック

「フェムテック」はアメリカで誕生した言葉で、女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指します。今回は、フェムテックが誕生したきっかけをはじめ、フェムテックが注目される背景や世の中をどのように変えつつあるのかを紹介します。さらに、フェムテックが広がる社会で女性が活躍するために意識すべきことについても考えてみたいと思います。

女性ならではの課題や悩みを解決するフェムテック

フェムテックという言葉は以前から存在していましたが、2017〜2018年頃に巻き起こった#MeToo運動により、女性が声を上げやすくなったことで認知が拡大したと言われています。この頃に女性たちは言いづらかった自分たちの性的な悩みや課題をオープンに発信する流れが生まれました。

女性は生涯にわたり、生理不順や生理痛、PMS、不妊や妊活、妊娠や出産、更年期障害など女性ならではの健康課題で悩みます。日本のフェムテックは、生理周期を管理するアプリが最も一般的で利用者数も多いですが、近年は生理カップや布ナプキン、吸水サニタリーショーツといった機能性素材製品、ピルのオンライン処方などのサービスも登場しています。アメリカでは、さらに卵子凍結といったサービスもフェムテックの一つとして注目されています。

私自身は、ピルのオンライン処方サービスに注目しています。ピルは望まない妊娠を避けるための避妊薬としてだけではなく、生理不順や生理痛の解決にも役立つとされています。しかし、多くの女性が隠れるように婦人科に通ってピルの処方を受けていました。それが、インターネットのオンライン診察を受けてピルを処方され、ピル自体は郵送で送られてくるという、誰にも隠れることなく便利にピルが入手できる仕組みが素晴らしいと感じています。

フェムテックの拡大はさらなる女性活躍に不可欠

また、フェムテックが注目されているのは、女性の社会活躍が進んでいることも一因です。

女性の社会進出が進み、日本でも共働きで正社員として定年まで働くことを考えている女性が増えています。そうすると、必ず女性ならではの健康問題が仕事に影響する事態が起こります。実際に、妊活や更年期障害、生理痛など、女性ならではの健康課題に起因する心身の不調が仕事や組織の生産性を低下させることが、多くの研究から明らかになっています。これから女性活躍を国家の成長エンジンのひとつにしたい日本でも、これは大きな問題といえるでしょう。

そこで、ピルの処方や女性特有の健康課題に関する医療相談サービスと契約する企業も出てきています。女性は年齢を重ねると、心身の不調が更年期障害なのか病気なのかわからず、誰にも相談できずに悩みが深まります。気軽に専門医にアドバイスがもらえる環境が職場にあるのは、女性の人生を確実にハッピーにするでしょう。しかし、こうした施策に取り組んでいるのは、まだ一部の大企業に限られているのも事実です。こうした取り組みが中小企業にも広がっていけば、女性活躍社会の拡大、日本の生産性向上が期待できるのではないでしょうか。

日本でもフェムテック市場は拡大中

徐々にではありますが女性の社会活躍をサポートするフェムテックが意識されつつある中で、フェムテック関連のサービスやプロダクトも増えつつあります。

例えば、GUやユニクロが機能性素材を用いた高品質なサニタリーショーツをリーズナブルな価格で販売したことは、女性の悩みを解決し、生産性を高め、生活を変えQOLの高まりにつながっているようです。

現在、日本のフェムテック市場は生理周りにおいては成熟しつつあると言えますが、それ以外はまだまだこれからです。今後は日本も妊活や更年期障害、さらにはアメリカで増えている卵子凍結サービスなどにもフェムテックは広がっていくでしょう。

toreluna

諦めず能動的にアクションし、社会を変える人材に

先述した#MeToo運動やジェンダー平等などがきっかけとなり、女性特有の健康課題や性に関する悩みは個人のものとして隠すのではなく、オープンに公表していく時代へと変化しつつあります。ここで必要なのは、女性がこうした自らの健康課題や悩みを相手任せにせず、自分ごととして考えて自ら行動することが大切です。

私たち高橋ゼミも武庫川女子大学経営学部の女子トイレを舞台に、株式会社ネクイノ様との共同プロジェクトとしてトイレでナプキンを無料で受け取れるサービス「toreluna」の実証実験を行いました。アンケートでは9割の学生が急な生理で生理用品の持ち合わせがなく困った経験があることがわかりました。また経済的に生理用品の入手に苦労する「生理の貧困」も社会問題化しつつあります。「トイレットペーパーのように無料で生理用ナプキンを受け取れる社会にしたい」という想いに感銘を受け、ゼミ生たちとともにサービスに対するフィードバックやマーケティングのサポートに取り組みました。

フェムテック市場が拡大していく時代だからこそ、日本の若い女性たちは自らの性にまつわる悩みや課題について「しょうがない」と諦めるのではなく、解決できる分野だと前向きに捉えましょう。そして自ら能動的に情報を集めると同時に発信し、改善をめざして行動し続けられる人材をめざしてください。

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