• 2023/01/06

    福井 誠

Web3.0はインターネットの理想郷を実現するか

武庫川女子大学経営学部も設立から3年目となり、ゼミがスタートしました。3年生はゼミで新たな挑戦をたくさんしています。また、私自身が担当している講義科目「情報通信産業論」に大きく関わるWebの世界も、直近の2〜3年で大きく変化しました。今回はその変化の最たるものであり、近年盛んに叫ばれているWeb3.0について考えてみたいと思います。

ゼミでファシリテーター能力を身につける

本題に移る前に、まず近況のご報告から。

福井ゼミの合宿は武庫川女子大学北摂キャンパスにある研修施設「丹嶺学苑」で実施しました。今回は国内有数の質的調査会社である株式会社ドゥ・ハウスに参加していただき、モデレーターやファシリテーターの能力を養成するプログラムを共同で作ろうと考えています。調査会社と大学の相互協力は、調査会社にとって大学はZ世代の市場調査における良質な調査対象が集まっていますし、大学も積極的に調査会社と協力することで多くのメリットが期待できます。

もちろん最大のメリットを享受するのは学生たちです。人生100年時代において、女性が自身の生涯キャリアをデザインする中で、モデレーターやファシリテーターの能力を身につけることは、アルバイトはもちろん就職やキャリアアップ、結婚・出産を経て社会復帰する際などに必ず役立ちます。まずは私のゼミ生が実践することで、実際にどんな相乗効果や成果が生まれるかをテストしていきます。

ゼミ合宿での様子

本当にWeb2.0の次がWeb3.0なのか?!

さて、本題に帰って、私自身も3年生から受講可能な情報通信産業論を再構築する必要があり、改めてWebの世界を眺め直すことにしました。実際に眺め直すと、この3年間でずいぶん変化した部分があることがわかってきました。この15年ほどはWeb2.0と呼ばれる世界が中心にあり、それが発展した結果、GAFAMがWebの世界を牛耳る時代となってさまざまな問題が生じつつありました。そこにコロナ禍が到来し、最近はWeb3.0なるものが提唱されています。

ただ、このWeb3.0の世界が本当に到来するのか、そしてWeb3.0はWeb2.0やGAFAMが取り仕切るWebの世界に生じた問題を解決する救世主たるのかという点においてはまだわからない、と私は考えています。

そこで、過去を振り返ることから推測できる未来を考え、そこからWeb3.0の可能性を改めて考えてみようと思います。

インターネットというのはまさにカリフォルニアのカウンターカルチャーそのものです。1970年代にスティーブ・ジョブズが生み出したMacintoshは、大企業に集中するIBMのコンピュータを一般の人々に開放することで人々をエンパワーしたいという想いから誕生しました。ただ、実際にはエンパワーできるほど一般の人々は当初、使いこなせませんでしたが…。

第1期のゼミ生たちと

「ブロックチェーン」がインターネット上の「分散と共有」を実現する

その後、パソコン通信が誕生して人々はネットワーク化を志向するようになり、やがてインターネットが民間に解放されました。インターネットの世界は、分散する人々がつながることで相互に力を持ち、それが共有されてコミュニティが形成される「分散と共有」の世界を理想郷としていましたが、現実には理想とは大きく乖離した姿に成長していきます。そのきっかけがYahoo!やGoogleなどの検索エンジンを中心とした広告を収益源とする「ポータル」「検索エンジン」の誕生です。その後Web2.0が提唱され、プラットフォームへユーザーが書き込む形に移る過程でGAFAMが力を持ちました。そのビジネスモデルは「分散と共有」とは真逆の「集約と囲い込み」が中心で、それは新たに「自分の情報が自分の手から離れ、自分の情報が簡単に操作されてしまう」という問題を生み出します。

そして、問題を解決する救世主として登場したのが「Web3」です。Web3は「中心がなくネットワークに依存しない運営をすることで、GAFAMや国家に対抗する自律分散世界を実現する」ものだと考えます。それを具現化する要素のひとつとして挙げられるのが「ブロックチェーン」です。

ブロックチェーンを簡単に説明すると、ブロックと呼ばれる単位のデータを生成し、チェーンのように連結していくことで改ざん困難なデータ形式を作り出す技術です。そして改ざんが難しいということは、分散しておけることを意味します。その結果、データベースという中央集約の必要がなくなり、「管理者のいないネットワーク」を実現するカギとなる可能性があるのです。この点でもう一つのWeb3の特徴とされているメタバースよりもブロックチェーンが重要と考えています。

Web3.0の到来は未定だが、注視すべき存在ではある

Web3.0の実現に不可欠とされているブロックチェーン技術。この技術はすでに仮想通貨の世界で実用化されています。公開鍵と秘密鍵を用いて安全に個人が自分の仮想通貨を保管できるのは、ブロックチェーン技術のおかげです。今話題の(かなり怪しいですが)STEPNで用いられているNFT、銀行が不要になると謳われるDeFiなども、ブロックチェーン技術があるから実現できたサービスです。ただ、どのサービスも技術をビジネスの道具にしており、インターネットの理想郷をめざす流れとはほど遠いのが現実で、結果的にはWeb2.0やGAFAM時代と同様に「集約」が起こる予感がしています。

学生などの若い人たちは、今語られているWeb3.0が本当にWeb2.0に代わるものなのか、しっかりと注視すべきです。当然、詐欺のようなサービスが数多く出てくるでしょうが、先生や専門家のアドバイスを聞きながら最終的には自らの目で判断してください。ただ、今Web3.0を声高に叫ぶようなサービスは、決して次世代のインターネットを担うサービスにはならないでしょう。もしかしたら新しい概念が登場してWeb3.0は日の目を見ることなく消えゆくのか、GAFAMが支配する世界が続き、インターネット上は今しばらくダークな世界が広がるのか…それは未来の一人ひとりの行動で決まっていくでしょう。

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