外国人にとっての日本製品の魅力とは
‘爆買い’に象徴されるように日本製品は、外国人に大変人気があります。では、その魅力とは何でしょうか。
第一に考えられるのは品質や性能の高さで、これがメイド・イン・ジャパンと結びつき、外国人の目には日本製であることが魅力的に映るようになりました。さらに掘り下げていくと、海外製品にはない繊細さ、優しさが魅力であることがわかります。
例えば、日本の化粧品は、肌へのつけ心地が良く、匂いもやわらかで、感覚的な優しさに包まれることができます。小売の現場では、接客がきめ細やかで、いわゆる‘おもてなし’が人気を博しています。それらは日本では当たり前と思われていますが、長く愛されている商品やサービスであることも確かなのです。
そう考えるとやがては、外国人にとっても当たり前になっていき、吸引力が弱まることは容易に予測できます。そうした市場の成熟を鑑み、私は武庫川女子大学の学生たちのフレッシュな感性を投じた商品開発を行い、その中で日本製品の新しい魅力の創出と発信を実現したいと考えています。
新たな魅力創出のための3つの方向性
新商品開発では、現状の魅力を再認識して、さらに何が必要かを考えていくことが大切です。外国人からみた日本製品の魅力を分析した上で、私は次の3つの方向性に注目すべきだと考えています。
- クリエイティブな繊細さ
- より分かりやすく
- 体験する
まず1つ目は、今まで評価されてきた日本製品の‘クリエイティブな繊細さ’です。
例えば、卵ゆで器や汗取りシートなどは、東南アジアの人々にとって新鮮かつ機能性の高い商品として人気があります。
洋服のボタンの位置1つでも、日本製品は着る人のことをよく考えて作られており、着心地のよさ、動きやすさにつながっています。こうした商品のベースには、今まで日本の企業が培ってきた技術と感性があり、新商品の開発においても活用していくことが大切だと考えています。
2つ目は、コミュニケーション方法を練り、‘より分かりやすく’商品の魅力を訴求することです。
日本製品は1つの商品に数多くの機能を内包しており、ともすれば情報過多になりがちです。しかし、受け手はそんなに多くの情報を処理できません。日本で購入した商品を自国で販売する代購ビジネスなどでは、再解釈してアピールポイントを絞り、シンプルに訴求しています。魅力的な商品を開発するには、コミュニケーション方法も一緒に考えることが大切です。
3つ目は‘体験する’という付加価値です。
西宮市でも日本酒造りを目の当たりにできるツアーがありますが、日本の暮らしを連想できるような物語性のある体験ができれば、付加価値が高まると思います。今は各地域での体験型のイベントなども随分増えてきましたが、外国人が参加できるものはそんなに多くありません。もし、外国人を対象とした、日本らしさを体験できる機会をより多く作り出すことができれば、訪日や日本製品購買のリピーター増大にもつながることでしょう。
商品開発に不可欠なこと
私は、これまで大手広告代理店などに勤務する中で、様々な企業へマーケティングの提案を行ってきました。そうした経験からいうと、日本の企業の商品開発力は少し陰りがみえてきているように感じます。
理由は、若い人や女性のアイデアが反映されにくいことです。物事の決裁権は多くの場合、男性幹部社員に委ねられているという企業風土にあると考えています。これまで成功体験を重ねてきた決裁権のあるベテラン社員だけでは、固定観念や慣習から抜け出ることは難しく、フレッシュな風を入れなければ新しい発想は生まれないでしょう。
若い人と女性が発言しやすい土壌をつくり、ベテランは一歩引いてサポートに回るのが理想だと考えます。未来を拓くような新商品を開発するには、従来のメンバーだけでなく、社内全体から募集したり、社外との連携チームをつくったりといった、新しい体制作りを考えていくことも大切です。
さらに重要なのが、商品開発に携わる人たちの熱意です。
立場や組織の違う人たちでプロジェクトメンバーを組んだ場合、誰かが消極的であれば不成功に終わる可能性が高くなります。商品開発には、それだけエネルギーが要ることを心しておく必要があります。
地域貢献と学生の成功体験づくりを目指して
2020年、若い企業家と女性リーダーを育成するため、武庫川女子大学は新たに経営学部を開設しました。その中で私は、魅力的な商品開発をテーマに、若い女子大学生の力を活用し、企業の開発プロジェクトに共同参画することを計画しています。その目的の1つは、西宮市を中心とする地元の企業等と連携し、地元の産業や魅力を発信することで地域の活性化に貢献することです。
もう1つは、学生たちが貴重な社会経験と成功体験をすることにより、充実感と自信を持った上で、学び舎から社会へ飛び立つことができればと考えています。さらには、共同で作り上げた成功事例から新しいサービスが生まれることや、地元企業同士の連携、地域における人と人とのつながりへと発展していくことを願っています。
ターゲットとなる商材については、灘のお酒や神戸の洋菓子などに興味を惹かれます。灘のお酒を例にとると、宮水など酒造りに適した環境、さらには食文化に根付いた日本酒そのものにも魅力的な物語性があります。
お酒は20歳からしか飲めませんが、例えば、「成人式を祝うお酒、さらには成人したときだけでなく「初めて飲む日本酒」をテーマにするのも面白いでしょう。「誰が、どういうシーンで飲むか」というような用途開発などは、女性の視点が大いに役立つのではないかと思います。また開発プロジェクトのメンバーには、企業や私たち以外にもヘビーユーザー、初心者など、バラエティに富んだ熱意のある人々に参画いただけるといいですね。
兵庫県にはたくさんの魅力の種があるのですが、発信力はまだ弱いのではないかと思っています。一方で、ベースとなる技術力は十分にありますから、何をどのようにアレンジし、表現し、アピールしていくかが課題であるといえるでしょう。
女子力が発揮できる商材は、一般消費財を中心に数多くありますので、フレッシュな発想と女性の視点で、新しい魅力を付加した商品とコミュニケーションの在り方を探っていきたいと考えています。