• 2023/03/20

    金崎 健太郎

オープンデータを使ってみよう

2023年、武庫川女子大学経営学科の1期生もいよいよ最終年度を迎えます。4年生になると直面するのが卒業研究です。テーマを決めて文献を調べ、自分なりの分析に取り組む段階で立ちはだかるのが「データ」という大きな壁です。分析したいテーマは見つかったのに分析に適切なデータがない、そんな時のためにオープンデータについてお話しましょう。

オープンデータを国や自治体が積極的に推進

オープンデータとは、国や地方公共団体、民間事業者が保有するデータのうち、誰もがインターネットを通じて容易に利用できるようにしたものをいいます。行政機関が保有している情報は、国民はこれまでも情報公開請求などの手続きをすれば開示を求めることができました。オープンデータは、そういったデータを行政機関が自ら積極的に公開していこうとする取り組みです。

オープンデータの取り組みは2013年のG8サミット(先進8カ国首脳会議)をきっかけにスタートしました。ここでオープンデータ憲章が合意され、世界の先進国が揃って推進していくことが合意されました。特にアメリカのオバマ政権では、透明性や国民参加、官民連携などといった政府そのもののあり方である「オープンガバメント」の柱のひとつとして強力に推進されました。

日本でも政府自らが積極的に保有している公共データを公開する方針を決定し、地方自治体でも全団体が取り組むことを目標としたことで、オープンデータは増え続けています。公開されたオープンデータはすべて無償で提供されており営利、非営利にかかわらず二次利用が可能です。さらに、すべてのオープンデータがインターネット上において機械判読可能な状態で提供されています。

オープンデータを推進する狙いは大きく二つあり、ひとつは民間企業が活用することで新しい商品やサービスが生まれ、それによって経済が活性化することです。もうひとつは、公共データの公開が行政の透明性の向上、ひいては政府の信頼度を高めるといった狙いもあります。

「データがすべて」の時代が到来しつつある

すべてのオープンデータが、営利・非営利を問わず二次利用可能、機械判読可能、無償という状態で提供されているのは、これらのデータを分析して研究に取り組んだり、新たなアプリを開発したりするのも自由ということを示しています。実際に自治体が公開した街灯の位置の情報をもとに、地図で夜道の明るさを表示するアプリや、交番や犯罪発生地点の情報から防犯対策が行えるアプリなど、便利な新サービスが誕生しています。

最近はSNSや通販サイトで、居住地や過去の購買履歴などを参考にして配信された広告が目につきます。関心のない広告を見ることよりも、自分の情報が知らないところでいろいろな使い方をされていることに不安を感じる人も多いでしょう。現代の経済活動においては個人に関するデータがさまざまな使い方をされ、データをベースとした経済活動や政策形成があたりまえとなる、まさに「データがすべて」の時代が到来しつつあると言えます。コロナ禍での人流抑制に携帯電話の位置情報が可視化されて人流データとして報道されたように、膨大なデータを上手に使いこなすことで社会課題の解決に貢献したり、より便利で新しいサービスの誕生につながることも増えるでしょう。

自治体ごとにオープンデータの種類は異なる

オープンデータの種類はさまざまですが、大学生が卒業研究に用いる可能性が高いのは、人口データなどの基本的データのほか、道路や避難所、街灯設置場所のデータなど自治体が公開しているデータではないでしょうか。公開されているデータは各自治体ごとに異なりますが、皆さんが想像する以上にさまざまなデータが公開されています。例えばオープンデータが進んでいる神戸市では、公開しているデータの種類も人口や百貨店等の商品別販売額、タクシーの乗車人員や犯罪の発生状況など多種多様です。

オープンデータ活用において注意すべき点は、各自治体ごとに公開データが異なるということ。その理由は、オープンデータが自治体が自主的に行っている取り組みであることと、自治体ごとに保有するデータの種類や保管状況が異なっているためです。例えば、データが紙で保管されていたり、デジタルデータが存在するものの加工可能な形式ではない場合などはオープンデータにすることができません。公開する意思がないのではなく、まだ公開できる状態にないケースがほとんどだと思われます。

今後はますますオープンデータが普及し、それに伴って「どのように分析するか」や「そしてそこから何を生み出すか」といった視点が重要になっていくでしょう。

論理的思考にはデータの上手な扱い方が必要

学生たちが社会に羽ばたいて活躍する上で「論理的思考」は必要な能力です。その論理的思考には客観的証拠、つまりエビデンスの存在が重要です。エビデンスの多くはデータによって支えられており、データを正しく扱えるかどうかが論理的思考を左右します。

卒業研究は大学生活の集大成であると同時に、データを扱う訓練をするには格好の機会です。データを上手に扱う上で大切なことは、データという数字を前に、まず最初に「何をやりたいのか」や「何を求めたいのか」を自身でしっかり定めておく必要があるということです。いくら分析の素材であるデータが良くても、これらが定まっていないと正しい分析結果は得られません。単にデータがあるから正しいわけではないことを理解した上で、データを上手に扱いながら卒業研究に取り組んでいただきたいです。

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