「見えない家事」に目を向け、誰が何を担っているかを明らかにする。それは大切ですが、仕事の一覧ができれば、負担のあり方まで分かったことになるのでしょうか。
近畿圏の女性を対象に家事や地域活動の52項目を調べる(藤井、2026)と、主に担う人が多くても負担感が相対的に低い仕事と、主に担う人が少なくても負担感が高い活動が見えてきました。分担の認識と負担感のずれから、女性の就労や社会参画を支えるうえで何に目を向けるべきかを考えます。

※ 本コラムは、藤井(2026)の研究成果の一部を紹介するものです。
藤井善仁(2026):「家庭における女性の役割分担と負担感-主担率と負担感の乖離が示す女性の地域・社会参画への課題の検討-」、地域社会学会、「地域社会学会年報」、第38集
「見えない家事」を見つけた、その先を問う
ごみ出しの前には、家の中のごみを集め、分別する作業があります。調理の前には、献立を考え、食材を確認する仕事もあります。家事研究では、従来の調査で捉えにくかった、こうした作業や、作業を進めるための判断、段取り、調整に目が向けられてきました。それらは、「見えない家事」や「家事のマネジメント」と呼ばれています。
ただ、「見えない家事」という言葉を使う際には、何を指しているのかを丁寧に整理する必要があります。調査の項目に表れにくい作業なのか、担っている本人が家事として意識していない仕事なのか、それとも作業を進めるための判断や調整なのか。何が、誰にとって見えにくいのかを区別して考えることが重要です。
さらに、仕事の存在や担い手を明らかにすることに加えて、本人がそれをどの程度負担に感じているのかも、確かめる必要があります。誰が何を担っているかを把握することと、本人が何を重く感じているかを理解することは、同じではありません。この二つを分けて調べることが、今回の研究の出発点です。
もう一つ、家庭の外にも目を向けたいと考えました。PTAや町内会などの活動も、世帯と地域の関わりに伴う役割です。家庭内の作業に比べて、こうした役割の分担と負担感はどうなっているのでしょうか。これらも同じ調査に含め、家事と同じ二つの側面から尋ねました。
同じ52項目を、二つの側面から調べる
調査は2025年2月、近畿2府4県に住む30代から60代の女性400人を対象に、インターネットで実施しました。調査対象は、有職者と専業主婦それぞれ200人とし、両グループとも30代・40代・50代・60代が各50人となるように設定しました。分析したのは、一人暮らしを除く354人で、有職者155人と専業主婦199人です。
調査項目は、2025年1月時点で確認した家事代行サービスの認証事業者21社の提供内容を参考に整理しました。そこで得た家事・育児・介護などの37項目に、確認したサービス内容には含まれていなかった地域活動15項目を加えています。市場で提供されるサービスを手がかりにしつつ、それだけでは捉えられない役割も調査項目に含めました。
各項目について、「自分だけが担っている」、「自分が主に担っている」と答えた人の割合を合わせて「主担率」としました。これは主担当だという自己認識の割合であり、作業時間や回数を表すものではありません。
一方、「働くうえで、どの程度負担になるか」を1点(まったく負担ではない)から5点(非常に負担)で尋ね、平均値を「負担感」としました。専業主婦には、「仮に働くとしたら」と想定してもらっています。したがって、ここでの負担感は、日々の疲労全般ではなく、仕事との両立を念頭に置いた評価です。
主に担う人が多い仕事でも、負担感は同じではない
まず、家事や生活支援の結果を見てみましょう(表1)。
表1 家事・生活支援の主担率と負担感(4項目を抜粋)

項目名は同論文の表2に基づき、一部簡略化した。数値は藤井(2026)の掲載値。
注1:主担率は主担当であるという回答の割合で、作業時間や回数の割合ではない。
注2:負担感は1~5点の平均値で、高いほど重いことを示す。
食器洗いや洗濯機を回すことは、主に担う女性の割合が高い一方、負担感は調理より低くなっています。郵便物・宅配物の受け取りの負担感は、両グループとも52項目中で最も低い値でした。一方、調理は主担率が高く、負担感も家事の中で最も高くなっています。
主に担う人が多い仕事を、すべて同じ重さの仕事として扱うことはできません。藤井(2026)では、こうした違いを「高主担率・低負担感」と「高主担率・高負担感」というパターンとして整理しました。ここでの高低は、調査項目間の相対的な位置づけです。
もちろん、「洗濯機を回す」と「干す」、「たたんで収納する」は別々に尋ねており、洗濯全体が楽だという意味ではありません。負担感が相対的に低くても、分担の偏りをそのままにしてよいわけではありません。分担の公平さと本人の負担感は、区別して考える必要があります。

地域活動では、主担率が低くても負担感が高い
特に注目したのは、第三のパターンである「低主担率・高負担感」です。地域活動には、主に担う女性の割合が低いにもかかわらず、負担感が高い項目が並んでいました(表2)。
表2 地域活動の主担率と負担感(6項目を抜粋)

項目名は同論文の表2に基づき、一部簡略化した。数値は藤井(2026)の掲載値。
有職者の地域清掃の主担率は14.8%ですが、負担感は3.95でした。専業主婦では、「町内会・自治会などの役を担う」の主担率は17.1%ですが、負担感は4.15です。行政関係の委員への就任も、主担率は両グループとも約2%である一方、負担感は調理を上回っています。
52項目を負担感の高い順に並べると、有職者の上位13項目、専業主婦の上位14項目が地域活動でした。一方、地域活動なら何でも同じように重いわけではありません。チラシや回覧板の回覧は、地域活動15項目の中で主担率が最も高く、負担感は最も低くなっています。
このように、主に担う人の割合が高い仕事の順位と、負担感の高い仕事の順位は、必ずしも一致しませんでした。特に地域活動では、主担率では下位に位置する項目が、負担感では上位に並んでいました。こうした二つの指標の間に見られる乖離が、今回の研究で注目した結果です。
地域との関わりに、どのような負担を感じるのか
今回の調査では、主に担う女性の割合が低い地域活動でも、負担感が高いという特徴が見られました。この結果は、すでに抱えている仕事だけでなく、地域との関わりそのものがどのように受け止められているのかにも目を向ける必要性を示しています。新たな役割を引き受けることへの負担の予想が、参画のハードルになっている可能性も考えられます。ただし、今回の集計だけでは、その負担感に、現在の関与、過去の経験、将来への予想がどのように関わっているかまでは分かりません。その背景を確かめることが、次の研究課題です。
そのうえで、藤井(2026)では、地域活動へのイメージや関わり方の分かりにくさが、負担感に関わっている可能性を考察しました。役を引き受けたら仕事と両立できるのか、どこまで責任を負うのか、途中で辞められるのか。こうした見通しの立ちにくさも、参加をためらう理由になり得るのではないでしょうか。
また、役職を担う女性の少なさは、本人が避けているからとは限りません。担う機会そのものが限られている可能性もあります。低い主担率を、女性の意欲だけで説明しないことも重要です。
これらは、今後確かめるべき可能性です。参加すれば予想より負担が小さいのか、実際に重い負担があるのかは、今回の調査では分かりません。女性の社会参画を考えるとき、すでに抱えている家事や育児のために参加しにくいという問題に加え、これから関わる活動そのものを負担に感じて踏み出しにくいという問題も、検討する必要があると考えています。
家事の分担と、地域の受け入れ方の両方を考える

この結果から、支援にも二つの方向が考えられます。一つは、調理のように主担率と負担感がともに高い仕事への支援です。家族での分担を見直し、必要に応じて外部のサービスを利用するなど、抱えている負担を減らす方向です。
もう一つは、地域活動の運営や参加方法を見直す方向です。担当する内容や期間を明確にする、関わり方を選べるようにする、責任を一人に集中させない。実際に過重な役割があれば、その内容も変える必要があります。不安を本人の思い込みとして片づけず、地域組織の側も、無理なく関われる条件を整えることが大切だと考えます。
今回の調査は、「見えない家事」だけを取り出して、その負担の大小を測定したものではありません。したがって、「見えない家事の負担は小さい」と結論づける研究でもありません。問いたいのは、仕事の存在や担い手が見えれば、負担まで把握できたと考えてよいのか、ということです。
家庭内の仕事を分かち合うことと、地域との関わりを引き受けやすくすること。女性の就労や社会参画を支えるには、両方に目を向ける必要があるのではないでしょうか。「何を担っているか」に加えて、「何を負担に感じているか」を確かめる。その違いを捉えることから、必要な支援が見えてくると考えています。

