• 2021/09/13

    神栄 美穂

「人と同じ」方が危険かも⁈ 自身の差別化戦略について考えよう

経営学やマーケティングでは、必ずマイケル・ポーターの「3つの基本戦略」を学びます。その内容とは企業が生き残るための競争戦略には「コスト・リーダーシップ戦略」、「差別化戦略」、「集中戦略」の3つがあるというもの。特に企業経営では、他社と同じことをしていては競争に勝てないため、差別化することで自社の優位性を高めるという「差別化戦略」が求められます。今回は、学生自身の「差別化戦略」について考えてみましょう。

企業や商品のみならず個人にも必要な差別化戦略

経営学を学ぶ上で、必ず通るのが差別化戦略です。少し余談ですが、私自身は「差別化」という言葉があまり良い印象を生まないような気がしていて、個人的には英語の「Differentiation」の方が意味的にも適切だと考えます。

それはさておき、「差別化戦略」を意味する「Differentiation strategy」は、一般的に「他社と明らかな違いを作り出し、競争を優位に展開する」にはどうするかを考えることになります。

一方で、経営やマーケティングを学ぶ各学生に目をやると、「人と同じだと安心する」という人が多いことに驚かされます。確かに女性は「共感」や「横並び」を重視する性と言われていますし、日本人自体が「同調圧力」が強い文化なので、日本人なら誰もが自然に備わっている価値観なのかもしれません。ただ、外国の女性の多くは幼少期に友達と一緒にトイレに行ったりした経験はありませんし、人と異なる意見だからと自分の意見を引っ込めることもありません。人と違う行動や意見を「個性」として尊重する世界に生きています。

だからこそ日本の女子学生たちは、これから社会に出て活躍することをめざすなら「人と同じであることが、危険かもしれない」ということを頭の中に置いておく必要があると思います。

人と同じは危険。でも違いすぎるのも危険

私が「人と同じであることが、危険かもしれない」と考えるのは、大きく3つの理由があります。

ひとつ目は、就職活動で内定を勝ち取るには「違い」が必要だからです。多くの女子学生が就職活動で初めて競争に晒されることになります。しかも、経営学部の女性学生の多くがマーケティングや商品企画、特に化粧品やアパレルといった業種のマーケティングや企画、開発など、採用どころか携わる人数自体がごく少数の職種を希望します。当然採用されるのはごくわずかな人数のみ。そこに採用されるためには、やはり「人と違う」必要がある。隣の女子学生同士が同じような考え方や思考なら、採用担当者は2人とも採用しません。自分が選ばれるための武器として、しっかりとした差別化戦略を持っておく必要があるのです。

ふたつ目は、「誰かと一緒が必ずしも安全ではない」ということです。コロナ禍の中で特に感じることなのですが、どこか「多くの人と同じことをしているから安全」と考える学生が多いように感じます。これは自分で考えていないことを意味しますし、社会人になって自分の力で生きぬくには自分で考え、人とは違う自分だけの武器を作る必要があります。

そして最後は、「一人ひとりが違うから良い」ということ。例えば、73億人いる世界中の人々の遺伝子はすべて違っていて、同じ人は存在しないといいます。だからコロナ禍の中でも人類は生き残れているのであって、73億人が皆同じ遺伝子なら人類は絶滅しています。「みんな違ってみんな良い」のです。

ただ大切なことがひとつだけあって、それは「何もかも人と違うのが良い」ではなく「人と違っていても良い」ということ。これは企業も人と同じなのですが、「何もかも違いすぎる」状態では失敗します。何に対してもあまのじゃくだったり、いついかなる時もマイペース、ではダメ。「人がやっていないところをあえてやる」とか「ポリシーを持ってニッチを掘り下げる」といった「人と少し違う」部分が「Differentiation strategy」のカギになります。

 

「3つの輪」が重なる部分を探そう

実は私が担当している「経営学入門」という授業の第一回目では、必ず3つの輪の話をしています。「やりたいこと」の輪、「やれること」の輪、「やらなければならないこと」の輪という3つの輪が重なる部分を仕事にできれば絶対に面白くなる、という内容です。

まず、「やりたいこと」は大学4年間を掛けてじっくり探して見つければいい。学生から「自分のやりたいことが見つからない」と相談を受けることがあるのですが、それは誰かが与えてくれるものではないので腰を据えて探すしかありません。それがまだ見つかっていないのなら、まず「やれること」を自分の努力や取り組みで少しずつ広げておきましょう。そして「やらなければならないこと」は、心配しなくても永遠になくならないものです。そう考えると、差別化戦略を意識しながら「やりたいこと」を探し、「やれること」を広げていけば、必ず楽しめる仕事に巡りあえるでしょう。

今の学生はデジタルネイティブで、油断するとインターネットやSNSに支配されかねない環境下にいます。もっと自分ひとりでもできるはずなのに一歩引いたところにいようとするのは、こうした時代背景があるのかもしれません。”Go beyond your Comfort Zone.”の精神で、自分にとって居心地の良い世界に閉じこもらずに、一歩外の世界に踏み出してみましょう。そうすることで新しい世界が出現し、自分自身を差別化するためのヒントが見えてくるはずです。

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