武庫川女子大学経営学部の学びの特長のひとつとなっている「実践学習」は、学びのフィールドとなる学内外の企業や団体にご協力いただき、学生の皆さんに貴重な学びの機会を体系的に提供しています。今回は、他大学にはあまりないとされる「実践学習」のカリキュラムとその特徴、さらには「実践学習」を通じて得られる経験や学びについてご紹介します。
独自の体系的カリキュラムと年間80もの多様なプロジェクトで学ぶ
私たちのカリキュラムでは、学内外を学びのフィールドとする3分野の実践学習科目を用意しており、学生たちは1年後期から半期ごとに合計4つのプロジェクトやプログラムに参加し、企業や組織、団体と連携した実践的な学びを行います。
「①インターンシップ」は企業、官公庁、非営利組織などでの就業体験を通じて、実社会での課題解決に取り組みます。「②サービスラーニング」は地域のボランティア活動に参加し、協働を通じて新しい視点を得ながら,多様な課題解決を経験します。「③フィールドワーク」は観察や聞き取り、アンケート調査などを通じてデータ収集を行います。
年間で約80ものプロジェクトやプログラムが動いており、他大学ではほとんど見られない数の多さとテーマの多様さです。
大きな特徴は、企業以外にも地方自治体や非営利団体での経験ができることと、市場調査や企画、仕組み作りなどの業務に深く参画できることの2点です。インターンにありがちな「お手伝い感覚」とは異なり、自主的な行動や思考を必要とする能動的な学習方法がベースとなっています。
さらに、実践学習センターを設立し、目指すキャリアに応じて「実践学習」を体系的な学びとするためのサポートを行っています。
社員や職員と二人三脚でプロジェクトに深くコミット
「実践学習」では具体的にどんなプロジェクトが進んでいるか、その一例をご紹介します。
「武庫女情報スマート化プロジェクト」では、学内に導入された「LINEを使ったFAQシステム」をより多くの学生にとって、より使いやすく、より便利なものにすることを目的に、経営学部の学生が「実践学習」の一環としてプロジェクトに参画しています。
具体的な活動内容は、武庫川女子大学のプロジェクトチームメンバーである職員の方々と協働し、学生への利用を浸透させたり、改善提案などを行います。その中で実際にFAQシステムのオペレーターとして活動したり、アンケート調査を実施する中で、自身の経験やアンケート結果をもとに改善点を洗い出して提案するなど、業務全体を把握、理解した上で提案していきます。
プロジェクトメンバーである職員と二人三脚での取り組みは、もはや「お手伝い」や「お客さま」ではなく、学生自身がプロジェクトメンバーの一員であると自覚するのに十分なほど、役割と責任を感じながら取り組んでいました。
学びのサイクルを回転させよう
「実践学習」では、働く現場でリアルな仕事に触れるのはもちろん社員とのコミュニケーションなど、教室とは異なる学びを経験できます。こうした学びのサイクルは「経験学習」と呼ばれ、具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験という4つのプロセスで進みます。ここでは、各プロセスについて簡単に説明します。
1)具体的経験
学ぶ本人から社員やプロジェクトに対し、能動的にコミットしながら経験を重ねていくことです。
2)内省的観察
いわゆる「振り返り」です。仕事の現場を離れ、自分の行動や起きた出来事をさまざまな観点から振り返ります。大切なのは、そうした「振り返り」を次につなげることです。教員からのサポートもこのポイントで行われることが多いです。
3)抽象的概念化
現場での経験を他の状況や将来も使えるように、ルーティン(仕事のしかた、手順)やルールのような「知識」にしていきます。
4)能動的実験
作ったルーティンやルールを現場で試します。これが新たな具体的経験となり、再び学びのサイクルが始まります。
能動的な思考や行動が実践学習の学びを大きくする
学生の間に社会の現場に出て仕事を経験する最大のメリットは、いち早く「学び方を学ぶ」経験ができることです。特に女性は結婚や出産、子育てなど、キャリアが途切れる可能性が男性よりも高いという事実があります。途切れたキャリアを復活させるには、自分なりの「新たな学びを自分のものにする」手法を確立しておく必要があります。大学時代に「新たな学びを自分のものにした」経験があれば、新入社員研修からいち早く新たな知識やスキルを自分のものにすることができ、スムーズに社会人生活を始められるでしょう。また、中断したキャリアを再開するときや、新たなキャリアに踏み出すときには、「学び方」を知っていることが非常に大きな強みになります。
アルバイトでも同様の経験ができるという人がいるかもしれません。ただ、「実践学習」は半期を1サイクルとして「学び方を学ぶ」経験を卒業までに4回体感します。しかも、「インターンシップ」、「サービスラーニング」、「フィールドワーク」という3つの異なる視点からの学びが得られ、アルバイトで得られる経験とは決定的に異なります。
最後に、実践学習のような現場で学び成長するためには、「参加する前の準備」が大切です。例えば、商品開発プロジェクトに参画する場合、事前にどんな理論やフレームワークが存在するのかを自分で調べ、類似商品の開発ケースを探した上で現場に入っていきます。そして、理論と実践の違いを体感し、振り返ってどうすべきかを考え、気づきを次の機会に生かしていく……この「経験学習」のサイクルを体験することが、実践学習のもっとも大きな意義だと言えます。
そしてもうひとつ、実践学習の現場では、与えられたことを与えられた通りにするだけでは気づきを得られず、実践学習の意味がありません。「実践学習」で得られる学びは、自身で体感しないと獲得することのできない「暗黙知」であり、教室や書籍で学べる「形式知」とはまったく異なるものです。この貴重な学びの場をさらに有効活用するべく、教員は各段階で学生をサポートしますが、あくまで学びを深めていくのは学生自身の能動的な行動に委ねられています。学生たち自身が自分たちで準備し、考えて行動することで、「実践学習」の現場で大きな学びを得てほしいと考えています。