• 2026/04/03

    高橋 千枝子

エフェクチュエーションとマーケティングの違いとは?

近年、「エフェクチュエーション」という言葉を聞く機会が増えています。現在は、成功をめざす起業家のための思考や行動の理論として語られることが多いですが、今後はマーケティングを学ぶ学生やマーケティング業務に携わる社会人はもちろん、すべてのビジネスパーソンが知っておくべき考え方、理論になっていくと思います。今回は、エフェクチュエーションの意味や特徴、マーケティングとの違いなどについて考えてみます。

エフェクチュエーションは起業家の思考・行動

エフェクチュエーションとは、「未来を予測して計画する」のではなく「今、身のまわりにある手持ちの資源でまず動き、関わる人たちと行動しながら一緒に未来をつくっていく」という起業家の思考・行動の理論です。この理論は、たとえば自分ができること、持っているもの、つながっている人など「自分たちがコントロール可能な今」にフォーカスしてスタートし、試しながら思考や行動の方向性を決めていくのが特徴です。
また、エフェクチュエーションは、

・手中の鳥の原則
・許容可能な損失の原則
・クレイジーキルトの原則
・レモネードの原則
・飛行中のパイロットの原則

という「5つの原則」に基づいて行動や思考を進めます。詳細については割愛しますが、これら5つの原則はインド人経営学者サラス・サラスパシー氏が体系化したものです。

エフェクチュエーションのメリット、デメリット

エフェクチュエーションのメリット、デメリットについて考えてみましょう。
まず、メリットとして挙げられるのはリスクを最小化できる点です。
エフェクチュエーションでは、自分ができることを自分が動ける範囲で行動し、手応えがなかった場合は撤退したり次の手を打つなど、自らの裁量で判断するので、時間的、経済的リスクを最小化できます。加えてリスクが低いがゆえに、撤退や戦略転換といったネガティブな方向転換も迅速に判断、実行できる点もメリットと言えるでしょう。
逆に、調査すれば見えてくることを見えないまま進めてしまう可能性がある点は、エフェクチュエーションのデメリットかもしれません。しかし、動いているうちに想定外の「正しい場所」にたどり着くこともあるので、一概にデメリットとは言い切れないかもしれません。

エフェクチュエーションとマーケティングの違いとは?

エフェクチュエーションは、自分自身の行動力や知識、人のつながりを起点に思考を進め、行動します。これに対してマーケティングは、まずはコストと時間をかけて調査・分析をおこなった上でSTPや4Pのフレームワークを用いながらターゲットや目標を定め、それらを起点に計画や戦略を立案して行動します。
大切なことは、エフェクチュエーションとマーケティングは、どちらかが正しい、正しくないというわけではありません。
まだ世の中に存在しない新規事業や製品、顧客ニーズが見えなくて不確実性が高いケースに関しては、エフェクチュエーションの思考はリスクを最小化できるため、スピード感を持って行動できます。これに対し、比較的安定した市場で既存製品の拡大や改善を図る場合は、目標を定めて計画的に実行するマーケティングの思考を適用するのが有効です。
変化の大きな今の時代、エフェクチュエーションとマーケティング、両方の視点を持つことが重要なのです。たとえば、新しいアイデアを実現しようとする初期段階では、エフェクチュエーション的な思考に基づき、小さく早く動いて反応を確かめます。そして手応えが出てきたらマーケティング的な思考に基づいて市場分析や企画設計を行い、戦略を立案して行動します。このようにエフェクチュエーション的な思考とマーケティング的な思考を組み合わせることで、より柔軟で実践的な取り組みが可能になります。

エフェクチュエーション的思考とマーケティング的思考、両方を身につけよう

ある程度経験を積んだ起業家なら、エフェクチュエーションの内容を知ると「自分が無意識にやってきたことが体系化されている」と感じるでしょう。しかしながら、エフェクチュエーションは起業家以外の多くのビジネスパーソンにも役立つ思考だと考えています。そこで、私のマーケティング授業では2026年度からエフェクチュエーションを取り上げることにしました。
企業の中で新しいものを生み出すために経営資源を動かそうとすると、事前に計画や戦略を立案して承認をもらう必要があり、そこではマーケティング的な思考が求められます。ところが実行する現場は、計画通りに進まないことの連続です。 結果として、現場ではさまざまなトライアルを繰り返すエフェクチュエーション的な思考や動きが必要になります。
大学生や高校生といった未来のビジネスパーソンの皆さんは、マーケティング的な「計画する力」とエフェクチュエーション的な「まず行動する力」の両方を身につけ、状況に応じて使い分けられるようになりましょう。

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