• 2020/08/04

    神栄 美穂

<連載>コロナ禍のビューティートレンドエッセイ 第3回 ”Withマスク・ビューティー”:スキンケア編

第1回・第2回では、「“Withマスク・ビューティー”:メイクアップ編」として、「マスクを着けていてもメイクをする女性」の求める、化粧品に対する2つのニーズと、マスクメイクアップの「仕上がり」に対するニーズについてまとめました。第3回では、「スキンケア編」に移りたいと思います。

ます、スキンケアカテゴリーのビジネス状況ですが、コロナ感染症によるスキンケア市場の売上に対するインパクトは、主に中国をはじめとするインバウンド旅行者の購入減によるところが大きく影響しています。

これまで、2014年頃から徐々に増え始めたインバウンド旅行者は、日本製の化粧品、特にスキンケア化粧品を好んで買い求めました。皆さんも、デパートやドラッグストアで、たくさんの化粧水やシートマスクなどを購入するインバウンド旅行者の姿を見かけたことがあるのではないかと思います。インバウンド旅行者、特に中国の消費者にとっては、「日本製の商品」は品質に対する信頼が高く、また、同じアジア人の肌のために開発された商品として、高い人気を誇っています。そのため、スキンケア市場の売上高については、コロナ禍の外国人の入国禁止措置の影響を受けた分、減少しています。

一方、日本人女性による需要については、メイクアップ製品ほどの変化はないと思われます。なぜなら、外出自粛要請で家にいようが、マスクを着けて外出しようが、それらに左右されることなく、保湿やエイジングケアなど「肌のお手入れ(スキンケア)」は必要だからです。ただ、外出自粛やマスク着用によってメイクアップをする機会が減った分、「クレンジング製品」に関しては、消費が若干減っているでしょう。

マスクの中の肌はバリア機能低下状態!

それでは、マスクを着けている時のスキンケアニーズを見てみましょう。

冬にインフルエンザや風邪の予防のためにマスクを着けたり、春先の花粉を防ぐためにマスクを着けたりしていたのとは違い、日本の高温多湿の夏に向かった季節の中でマスクを着け続けるのは、ほとんどの日本人にとって初めての経験になると思います。冬や春先であれば、マスクを着けているのは「暖かくて良い」のですが、初夏や夏にマスクを着けているとマスクの中は文字通り「高温多湿」です。マスクは鼻や口から外気を遮断するものですから、呼吸によって吐き出される息は、マスク内に籠ります。したがって、マスクを着けていると、「マスクの中が蒸れる」という不快感が高まります。その結果、肌の水分量が必要以上に多い状態になってしまい、肌のバリア機能が乱れる原因になるとされています。

「肌の水分量が必要以上に多い状態」は、一見、「肌が潤っている・十分保湿されている」のと同じように思われるかもしれませんが、実際にはそうではなく、逆に肌の潤いを保つ機能(肌のバリア機能)が乱れ、「肌の乾燥」につながりやすくなります。

また、着けているマスクが話す時に「擦れたり」、マスクを着脱する際に「摩擦」が生じたり、肌に刺激が加わる機会も増えています。このような刺激も「肌のバリア機能が乱れる」原因になります。このため、「肌の乾燥」や「マスクが触れる頬の辺りが赤くなる」といった、スキントラブルが出てきます。

マスクを着けている時間が長くなったため、「肌のバリア機能が乱れる」ことによって起こる「肌の乾燥」や「肌に赤みが出る」というスキントラブルがある人のスキンケアニーズとしては、「肌にやさしい製品」「敏感肌用の製品」・「肌に低刺激の製品」を求める声が高まります。スキンケアをする際、なるべくこれ以上の肌への刺激や負担を与えたくないためです。

マスク焼けに注意!

そしてもう一つ、マスクを着けていることによって、この夏、女性たちが非常に気を付けないといけない点は、「マスク焼け」です。

たとえば、冬にスキー場でゴーグルをつけてスキーやスノーボードを楽しんでいると、「ゴーグル焼け」を起こしてしまうように、マスク着用が常態化された今日では、しっかりと日焼け止めを塗るなど日焼け対策を施して、「マスク焼け」を避けるようにしなければいけません。

日焼け止め(UVクリーム等)は、スキンケア製品とメイクアップ製品の中間に位置する製品群なのですが、UVブロック技術の処方的な面から、スキンケアカテゴリーに入れました。そして、処方に対するニーズとしては、メイクアップ製品のベースメイク製品と同様、「UVブロック処方の持続力(ラスティング)」が大きなニーズになります。マスク下の高温多湿な状況や、マスクが触れたりしてもUVブロック力をキープする「持続力(ラスティング)」は重要ですよね。

マスク着用によって軽減される肌悩みも⁈

一方、エイジングによる肌悩み(しわ・シミ・たるみなど)については、マスクを着用することによって、顔の下半分が隠され、露出が減る分、それらの肌悩みは軽減されると思われます。特に、肌のたるみに関しては、ほうれい線に沿った口元から下にかけてのエリアが気になる部分ですが、ちょうどマスクを着ければ隠れるため、スキンケア製品に頼らなくてもよくなりますよね。

第1回で紹介した、スーパーモデルのイマンは1955年生まれの64歳なのですが、マスクを着けている写真では、誰が見てもその年齢には見えないのではないでしょうか。彼女は元々の若々しさもありますが、マスクを着けることによって、より一層、若々しく見えませんか?

参照:イマン インスタグラム

以上、マスクを着けている女性の求めるスキンケアニーズについて、まとめてみました。

次回は、マスクメイクアップやスキンケアのニーズに対応するであろう、企業の今後の化粧品開発のトレンドなどを考えていきたいと思います。

経営学部では、このように消費者のニーズの変化を探ったり、そのような変化による企業の動向などを仮説を立てながら考える演習を行っています。興味を持たれた方は、学生を交えた産学連携も行っていますので、ぜひお声をおかけください。また、受験生の方は、ぜひオープンキャンパスや入試相談会にお越しください。

【筆者プロフィール】
外資系企業に23年間勤め、うち12年間をフランス系化粧品企業のアジアイノベーションセンターやリサーチ&イノベーションセンター イノベーション本部にて、日本・韓国・中国の消費者のニーズやビューティートレンドを調査・分析し、化粧品(スキンケア・メイクアップ・ヘアケア・ヘアカラー)のグローバル製品開発に携わる経験を豊富に持つ。経営学修士(MBA)。

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