経営学部で学ぶ学生は会計学を学ぶ意義やメリットがとても大きい一方で、中には、「会計学が苦手だ」と感じる人もいるようです。今回は、会計学を学ぶ意義や会計学を学ぶことによって得られるメリットなどについて考えます。

下田ゼミでの農場体験(熊本県産山村)にて撮影
家計簿と財務諸表の共通点
個人の家計を考えてみると、仕送りやアルバイトなどで得た収入、生活費や交際費などの支出があるはずです。そして、家計簿アプリなどを使って収入と支出を記録して管理するのが一般的です。同じように、企業も企業活動を通じて得たお金や成果を財務諸表という形で管理しています。
企業は、株主や銀行など多数存在する利害関係者からの信用を得るため、自らの企業活動の透明性を高める必要があります。そこで企業は一定期間ごとに財務諸表という形での報告を行うことで、利害関係者に対する信用を積み重ねていきます。
そして家計簿と財務諸表には、どちらも「活動を通じたお金の出入りを記録、管理することで、将来の計画や改善につなげる」という共通点があります。
会計学を学び、財務諸表を読み解ければメリットがある
財務諸表は利害関係者のためだけに存在するものではなく、学生にとっても決して遠い存在ではありません。例えば、就職活動では多くの企業について情報収集を行いますが、財務諸表を読み解くことができれば、知名度やイメージなどに加え、企業がどれくらい元気か、どんな強みを持っているのかを、数字を通して読み取れるようになり,り多面的な企業情報を収集することができます。これにより企業をより深く理解することができ、他の学生との差別化にもつながります。これが学生にとって会計学を学ぶ意義のひとつと言えるでしょう。
実際に武庫川女子大学経営学部では、1年生から必修科目として『会計入門』という科目があります。この授業では、簿記の基本的な考え方を理解した上で、実際に上場企業の財務諸表を見ながら、その企業はどのような経営状況にあるのかを考察して発表してもらうなど、実践的な授業を行っています。
数学の得意・不得意は、会計学の理解度とは無関係
ただ、財務諸表を見る機会がある経営学部でも、簿記や会計学に苦手意識を持つ学生は少なくないようです。学生が苦手意識を持ってしまう原因として一番大きいのが、数学への苦手意識や数字に対する抵抗感です。中学生や高校生時代に、数学の授業で公式を覚えて数式を計算しなければならないという状況を経験し、数字に強い苦手意識を抱いた結果、大学生になって会計学の授業で、財務諸表に数字が登場しているのを見た瞬間、数学と同じようなものだと感じて苦手意識を抱いてしまうのかもしれません。
しかしながら、会計学は大学生になって初めて学ぶ学問ですし、数学とはまったく異なります。武庫川女子大学経営学部でも、数字に対する苦手意識や先入観から、最初は少し腰が重い学生もいました。しかし、最初の壁を越えれば他の科目と同様に問題なく学べています。
経験上、数学が得意か苦手かは、会計学を学び理解する上ではあまり関係ないように思います。
会計学の学びは、どんな仕事にも役立つスキル
会計学は、会計士や税理士、企業の経理部など「お金を扱う仕事に就く人に必要な学問」というイメージを持つ学生が多いようですが、決してそうではありません。例えば、マーケティングの業務ではKPI(重要業績評価指標)分析を用いることがありますが、これは最終目標の達成度を測るための指標で、目標達成までの過程を数値で見える化し、進捗状況を把握できるようにするものです。会計学を学んでいれば容易にKPI分析を理解でき、目標達成に必要な行動やリソース配分を適切に管理し、組織全体のパフォーマンス向上に寄与することができるでしょう。また、営業担当者であれば、取引先の経営状況や将来性などを財務諸表を読み解いて把握し、適切な提案や交渉に活かすこともできます。このように、会計学を学ぶことはマーケティングや商品開発、営業など、どんな部署に配属されても役立つスキルなのです。
数字の裏にある“企業のストーリー”を読み解けるのが、会計学の面白さです。高校生や大学生の皆さんは、企業や世の中の動きに興味を持ち、まずは、ひとつ気になる企業の財務諸表を見てみましょう。それが、あなたの未来を広げる第一歩になるかもしれません。


