私の研究室のテーマは『ブランドコミュニケーション』です。2024年4月からスタートした3年生のゼミ生と一緒に、ブランドコミュニケーションに関する研究に取り組んでいます。
今回は、ゼミでのブランドコミュニケーションについての学び方やその内容について、ゼミ生の感想も交えながら紹介します。
ブランドコミュニケーションの理論知識を輪読で学ぶ
西口ゼミでは、ブランドコミュニケーションを学ぶ理論知識の土台を形成するため、新加入のゼミ生を対象にブランド専門書の輪読発表を行いました。今年度は、日本企業と欧米企業のブランディング手法を比較分析されている石井淳蔵先生の『進化するブランド−−オートポイエーシスと中動態の世界』を採用しました。
例えば、日本企業は自身のブランドを大切にし、時代とともに変容、進化させながらブランドを成長させていきます。このブランディング手法を『進化型』とし、「ブランドの中に市場がある」としました。対する欧米企業は、変化による成長には目を向けず、ブランドの活動をあらかじめ定めた枠内に留めることに焦点を置き、ブランドを自身の手中でマネジメントしながら成長させていきます。このブランディング手法を『反進化型』とし、「市場の中にブランドがある」としました。この『進化型』と『反進化型』を比較分析することで、ブランドの一貫性を保ちつつ時代に即して柔軟に変化していく『進化型』の日本流ブランディングの強みを明らかにしています。
チームで輪読発表に取り組む
輪読発表では12名のゼミ生を4チームに分け、2チームが同じ部分を輪読して発表し、2チームが発表内容に対する質問を行います。発表を担当するチームは、発表内容をチーム内で議論しながら詰めていくことになり、内容の理解と議論する経験を積むとともにチームメンバー間の絆や学びも深まっていきます。また、2チームが同じパートを発表するので、他チームとの解釈の差や別視点の新たな気づきなどを得ることができます。聞き手側の2チームは、発表内容に対して的確な質問をする上で必要な深い理解や、発表に対して瞬時に質問する瞬発力を発揮する機会となります。
こうした学びの環境づくりがゼミ生たちの緊張感を生むとともに、やり切るための突破力を育むことやさらには学生ひとりひとりの自信につながると考えています。また、先に座学で知識を学んだことを将来の卒業論文制作やインターン、就職後の仕事で活用できれば、学びを実践の場で発揮する経験や反復学習の効果を実感する貴重な経験を得ることができます。
このようにチーム制での輪読発表が、学生ひとりひとりの主体性や学びに対する効果を最大限に発揮できる仕組みになることを期待して取り組んでいます。
輪読や発表が学生の成長に直結
ゼミ生にとっては輪読発表がさまざまな新しい発見につながったようで、ゼミ生自身が記した振り返りにも「発表や質問準備のために何度も読み返すことで理解を深められた」や「『進化型』と『反進化型』の特徴を理解できた」、「輪読発表がプレゼン練習になった」といった新たな学びの発見のほか、「チーム内での共同作業を通じて自分と異なる視点や意見を取り入れる重要性に気づいた」、「やりきる力が身についた」など、自分自身の考え方や行動にも新たな発見があったようです。
ゼミ生は輪読発表の終了後、チームごとに女子大生である自分たちが興味のあるテーマを主体的に定め、輪読発表で学んだことを生かしながら調査、学習、発表を行いました。具体的なテーマとしては、アニメ「プリキュアシリーズ」や多くのキャラクターを扱う「サンリオ」、ディズニーランドを運営する「オリエンタルランド」、いつの時代も現場主義を貫き続ける「サントリー」などです。こうした実際の企業やブランドの『進化型』ブランディングについて、チーム内でさまざまな角度から調査して議論を重ね、発表を行いました。
主体的に定めたテーマに関する発表に取り組む中でも、「学習した内容を具体的な事例で説明できたのは成長」や「文献調査能力が向上した」、「あのキャラクターも『進化型』ブランドだったのかと興味深かった」など、ゼミ生たちは自身の成長を実感しています。
ブランドは信頼、コミュニケーション、価値を表現
高校生の皆さんがブランドと聞くと高級ブランドのマークなどを想像し、『ブランド=高級品』というイメージを持っているかもしれません。それは決して間違いではありませんが、経営学におけるブランドとは信頼の証であり、コミュニケーションの手段であり、経営理念を体現するものです。だからこそ素晴らしいブランドは年月を超えて人々に愛され続け、形がなくても価値が高いモノとして取り扱われるのです。
西口ゼミでは、「学生が主体的にテーマを決める」、「討論などを通して専門的知識を深める」、「チームワークで新たな気づきと発見を通じて個人的成長をめざす」といった学び方のテーマを掲げてブランド学習に取り組んでいます。