• 2022/08/05

    黄 婷婷

コロナ禍での教員&研究者生活を振り返る

武庫川女子大学経営学部が開設されて3年目に入りました。学部開設から今までの期間で、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)とその拡大防止対策のため,全世界の人々の生活様式が劇的に変化しました。同時に、新しい生活様式である「ニューノーマル」への対応が強く求められてきました。

今回は武庫川女子大学の教員としての期間を振り返りながら、教育の現場や研究活動で経験したコロナ禍での対応やニューノーマルの現状や展望をご紹介します。

オンライン授業ならではのメリット

武庫川女子大学経営学部は、開設以来ずっとコロナ対策に取り組んできました。まず教育についてですが、コロナ禍が始まっていたので入学式が中止となり、授業が始まるまでの期間にオンライン会議システムを使って、お茶会のようなクラスミーティングを複数回実施しました。学生の自己紹介や雑談などを行いながら、オンライン上で対面のような雰囲気を築くことに心を配りました。

また、コロナ禍となりオンライン授業が始まった当初は、Zoomを使ったライブ形式で行っていました。学生ごとに通信環境が異なるため、回線が脆弱な学生は授業が聞きづらくなる状況が起こりました。現在は原則オンデマンド、講義内容によってはオンラインライブ授業というスタイルで授業が行われていますが、こうした問題は今現在も完全には解決されておらず、現在進行形で解決法を模索しています。

ただ、ポジティブなこともありました。Zoomの投票機能やチャット機能を活用することで、リアル対面での授業よりもインタラクティブな授業ができるようになったほか、学生との対話の際、東京などの遠隔地にあるオフィスのスタッフの皆さんが参加できました。ほかにも都合で大学に来られない学生が、Zoomのおかげで授業に参加できたなど、オンラインならではのメリットも享受できました。

授業のデジタル化が研究にも影響

コロナ禍は、授業だけではなく教員の働き方にも大きな影響を与えています。

特に、複数の大学で教鞭を執る先生は、授業を担当する大学の数だけ情報システムのIDやパスワードを持つことになり、その管理や運用の負担が増しました。もちろんコロナ禍以前から大学の授業情報システムは運用されていましたが、非常勤講師は利用頻度が低いために大学側スタッフに任せたり、アナログな手法で代用することが許されていました。しかし現在は、非常勤講師など利用頻度が少ない先生でも、オンライン授業のデータ登録や生徒のコメント確認、生徒とのコミュニケーションなどで必ず大学のシステムを使用する必要があり、高いITリテラシーが必要となっています。

また、オンデマンド授業の拡大により、授業コンテンツの制作に時間を要しています。オンラインライブなら既存資料を用いて授業することもできましたが、オンデマンド授業となり動画制作そのものを先生自身が行う必要が出てきました。90分の授業動画制作だと、授業時間の2倍かそれ以上の時間を要し、YouTubeへのアップロードにも時間が掛かります。さらに、授業内容のアップデートには既存動画の再編集が必要で、こちらも簡単にはいきません。

オンデマンド授業動画

さらに制作した動画をオンデマンド形式で生徒に見てもらうには、先述した大学情報システムに動画を事前登録する必要があります。これもミスが許されないので登録には時間を要します。オンデマンド授業の素材づくりや登録は、私のようなIT系の教員でもそれなりの時間を要しますから、ITに詳しくない先生なら丸一日では無理でしょう。こうした作業が増えた結果、研究に費やす時間が削られてしまっています。これは、私を含めた多くの大学研究者が今後解決すべき課題だと考えています。

コロナ禍による地方のITリテラシー向上を実感

その研究活動についても考えてみます。ただ、多くの日本の大学の先生は研究時間があまり確保できないのが現状です。それでも教授会などさまざまな会議がオンライン開催となったことで、わずかではありますが新たな時間を創出できている部分もあります。

また、研究自体にもコロナ禍による変化が起きています。まず、複数の研究者で共同研究をする際、オンラインでの打ち合わせが一般化し、コストや時間を大幅に節約できています。今ではZoomで打ち合わせしながら研究を進めるのが普通で、研究スピードもアップしたように思います。

また、オンラインでヒアリングや視察ができるシステムを多くの自治体が導入したことで、研究自体を遠隔で行えるようになりつつあります。2020年や2021年にはコロナ禍により研究者の受入を拒否していた自治体も、オンラインでの協力を積極的に推進してくれ、2022年は研究を進められています。地方の過疎地に住む高齢者も、Zoomを使いこなしていたり、紙とFAXではなくGoogleフォームでのアンケート調査が可能になるなど、ITリテラシーが大幅に向上していることに驚かされます。

オンライン視察の様子

学会もオンライン開催へと進化

私は、ITリテラシーが高い研究者がとても多い経営情報学会に所属して活動していますが、学会もコロナ禍を機に大きな変化がありました。コロナ禍前は、当然のようにリアルでの実施が大前提でした。もちろんコロナ禍ではZoomを利用して開催しましたが、2022年春の学会ではアバターやバーチャル空間を使って開催しました。各研究者の発表はもちろん、複数ブースでのポスターセッションなども、リアル開催の要領で参加したり聞いたりできるため、参加した各研究者からの評価も高かった。ただ、バーチャル開催はずっと座っているので、腰が厳しくなるのがツラいところです(笑)

アバターやバーチャル空間を利用した学会の様子

今後はVRグラスなどが進化、軽量化すれば、さらにリアルとバーチャルの差が少なくなると思います。ただ、コロナ禍が収束してリアル対面で学会が開催されるようになっても、バーチャル空間のオンライン形式も残したハイブリッド開催になると考えます。やはりオンライン形式にしかない高い利便性を体感すると、やめてしまうのはもったいないと感じています。

自由度が増し、問われる自己管理能力

ここまで、教員や研究者としてコロナ禍の期間中に経験したニューノーマルへの対応や変化についてご紹介してきました。学生をはじめとする若い人たちは、今後のニューノーマルの時代を生きぬくためにまず自己管理能力、その中でも特に時間管理能力をしっかりと身につけてほしいです。オンデマンド授業になって時間割等の時間や教室などの場所に縛られることなく、いつでもどこでも好きな時に好きな場所で授業を受けられるようになっています。これは、どの授業をどのタイミングで受け、いつレポートや宿題を行うか、すべてを学生自身が自己管理する必要があることを意味します。非常に自由度が高く、自分のペースで学べる分、自己コントロール能力が問われているとも言えます。

社会に出て働くようになれば、自己管理能力の高低が仕事の成果や健康にも大きな影響を与えます。ぜひ、学生としてニューノーマルの時代をうまく生きぬきながら、適切な自己管理能力を身につけましょう。

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