コロナ禍が長引く中、日本社会の同調圧力の強さを感じることはありませんか。社会で生きていく上で他人との関わりはとても重要ですし、同調圧力には良い面と悪い面の両方が存在します。今回は、同調圧力を悪い方に働かせないために必要な情報リテラシーについて考えてみましょう。
コロナ禍でクローズアップされた日本人の同調圧力
社会という集団の中で生きる私たちは、他人がどのように考えているのか、また自分がどのように見られるのかがどうしても気になります。自分の考えや行動を他人のそれに合わせなければと考える傾向、それが同調圧力です。
単一の民族が農村で集団生活をしながら生きてきた「ムラ社会」をルーツとする日本社会では、従来から同調圧力が強いと言われていました。昨年来のコロナ禍においても、日本人の同調圧力の強さが悪い意味で指摘されるケースが多いと感じます。
しかしながら、同調圧力がすべて「悪」なのではありません。同調圧力には良い面もあります。コロナ禍への対応でも、法律で強制することなく呼びかけのみでほとんどの人が外出を控えたり、マスクを着用するといった行動がとれたのは、「みんなが外出を自粛をしているから、自分も従わなきゃ」といった同調圧力が良い方向に働いた結果と言えます。
日本の発展には同調圧力の良い面を生かすことが不可欠
一方で同調圧力が悪い方向に働くケースもあります。皆が冷静に考えることなく「他の人がやっているから」「テレビでこう言っているから」など、他者の言葉を盲目的に受け入れて従う場合です。
実際にコロナ禍では、マスクを装着する意味を考えずに装着者は正しくて非装着者は間違っていると決めつけたり、営業自粛しない背景や理由を考えずに一部の事業者を『悪』と決めつける世論が大きくなった時期がありました。その結果、『マスク警察』や『自粛警察』と呼ばれるような、過剰な動きをする人たちを容認する方向に社会が動きかけた時期も見られました。
世間の目に必要以上の窮屈さを感じることなく、幸せに暮らせる社会を作っていくためには、民族性とも言える特性のこうした悪い面を抑制し、良い面を生かしていくことが必要です。
情報リテラシーは3つの力で構成される
同調圧力に過度に流されないためには、他者からの情報のみに流されることなく、自分で必要な情報を集めて信頼に足りるかどうかを評価し、それをもとに自分自身で考える力が必要になります。この能力を情報リテラシーと呼びます。この情報リテラシーを構成するのが『自分で情報を集める力』、『集めた情報を吟味して取捨選択する力』、『選択した情報をもとに自分で考える力』の3つです。一人ひとりがこれらの力を備えることが、社会を正しい方向に進めていく上で非常に重要です。
多くの人が情報リテラシーを身につけていない社会では、フェイクニュースをはじめとするウソの情報に惑わされ、社会全体が正しくない方向に流されていくリスクが高まります。それは巡り巡って自分たちに不利益がもたらされ、時には『炎上』など直接的な被害を被ることにもつながるでしょう。
インターネット上に情報があふれる現代は、洪水のように多くの情報から信頼に足る情報を取捨選択する力がとりわけ重要と言えます。
情報リテラシーを鍛え、社会を正しい方向に向けられる人に
すでに授業でも学んでいると思いますが、学生時代に情報リテラシーを身につけたり鍛えることはもちろん可能です。そのひとつが、考えるベースとなる情報やデータが正しいかどうか、常にクエスチョンマークを持つクセを身につけること。
自分の意見を述べる時には、ネットニュースに出ている記事をそのまま鵜呑みにするのではなく、ほかの媒体でも情報を集めたり、記事の執筆者がどんな人かを調べたり、参考図書を読んだりなど、情報源の深掘りをぜひ行ってください。ひとつでなくいくつかの情報を集めて評価し、どの情報を参考にすべきかを判断してから考える……、その流れを身につけましょう。
情報リテラシーは、社会の担い手としての思考力と正しい判断力を備えるための基礎的な力です。一人ひとりが情報リテラシーを身につけて正しい判断をしていくことができれば、社会全体が同調圧力で間違った方向に歪む可能性も少なくなります。
情報リテラシーは、自分自身にとっても社会全体にとっても重要なスキルです。