経営学科の西口智美先生が碩学舎より『1からのブランド経営(共著)』を出版されました。
目次等はこちらです⇒https://www.sekigakusha.com/publications/detail/1st_28
(本著執筆に関して著者の西口先生のレポートです)
『コロナ禍に対抗する経営のあり方を考える』
コロナ禍に翻弄された世の中、運送業界をはじめ、ホテルや飲食業など、多くの企業は仕事がなくなり、経営困難の状況に陥った。多くの家庭も家計に苦しむ状況に直面している。こうした状況は誰も想像のつかない稲妻のように、急に我々に襲い掛かってきた。パニック、不満、ストレス、気力喪失などのマイナス感情が社会に蔓延し、我々を苦しめている。
そこで、本学の学術顧問である神戸大学名誉・流通科学大学名誉教授の石井淳蔵先生、近畿大学経営学部の廣田章光教授のお二人は、各大学の教員に声をかけ、今の時代に合う経営のあり方に関する研究執筆活動を行ってきた。様々な企業行動を研究分析し、多面的に議論を重ねった結果、【ブランドを基軸とする経営】は今の時代に最も必要な企業行動だという結論に辿り着くことができた。ブランド経営の大切さを考える1冊【1からのブランド経営】は5月に出版された。
私は執筆者の一人として、本書を次の読者にお勧めしたい。日々企業経営のあり方を考える経営者、ビジネスマンなどの実務家達にまず読んでいただきたい。コロナ危機のような困難に直面した時、他の企業はどのように危機を乗り越え、どう行動していたのかを知ってもらいたい。そして、経営学を学ぶ学生達にもぜひ読んでもらいたい。マーケティング発想の経営から、ブランドを基軸とする経営はなぜ大切なのか、経営学の真髄とは何かを知ってもらいたいと願っている。
本書で私が担当したのは、第10章〈アート引越センター〉の事例だ。当社の社史と関連資料を分析すると、創業した時代背景は、コロナに翻弄された今の時代との共通点が非常に多かったことに気づいた。一番印象深いのは、トイレットペーパーが店頭から消えた点だ。1973年に起きた第1次オイルショックにより、人々の生活はパニック状態に陥り、トイレットペーパーの買い占め現象が起きった。2020年、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスク不足が問題になる中、「買い占め」問題はトイレットペーパーやティッシュなどの紙製品に再び広がった。もう一つは、コロナ禍によって、運送業やホテル業などの業界は仕事を失ったことだ。1968年、鋼材問屋の下請けの運送業として、寺田夫婦が寺田運輸を創業した。しかし、僅か数年で第1次オイルショックに直面し、運送仕事の依頼が減り続ける苦境に陥った。この苦境から脱出しようと考えたのは、「アート引越センター」ブランドの立上げだった。ピンチをチャンスに変える寺田夫婦の前向きな経営姿勢によって、打ち出した生き延びる策は、コロナ禍に苦しむ今の経営者達にとって、参考になる智慧であり、ブランドを成長させる魂だと考える。
今回の執筆にあたって、女性学者の割合が多かったため、女性目線が大いに取り入れた専門書となっている。これまで男性目線で行われてきた経営学領域の研究は、女性学者の増加により、新たな発展ができるだろう。本学の経営学部も女子大生への専門教育に注力しているため、経営現場で女子力が活かされる新しい時代が来ると予感している。
西口智美