• 2020/07/27

    神栄 美穂

<連載>コロナ禍のビューティートレンドエッセイ 第2回 ”Withマスク・ビューティー”:メイクアップ編 ②

前回の“Withマスク・ビューティー”」メイクアップ編の①では、「マスクを着けていてもメイクをする女性」の求める、化粧品に対する2つのニーズについて、まとめてみました。引き続き今回のエッセイでは、マスクメイクアップの「仕上がり」に対するニーズについて、考えていきたいと思います。第1回目でも書きましたが、もう一度、この問いから始めましょう。

皆さんはマスクを着けている時、どのようなメイクアップをされているでしょうか。

外出の目的や場所、長さにもよると思いますが、マスクを着けなくてもよかった頃と比べると、少しメイクアップの仕方に変化があるのではないでしょうか。習慣や行動が変わるのは、それに対するニーズに変化があったからです。マスクをしていると、顔の下半分が隠れてしまうため、「ほぼノーメイク」・「メイクをしない」という人もいると思います。でも、外出先で食べたり、飲み物を飲んだりすることがあるなど、マスクを外す機会がある場合などは、マスクの下にメイクをするでしょうし、マスクを外さないとしても、仕事の時などは「ノーメイクというわけにはいかない」という人も多いと思います。そこで、今回は「マスクを着けていてもメイクをする女性」の求めるメイクアップの「仕上がり」に対するニーズについて見ていきましょう。

実際、インスタグラムには「#マスクメイク」としての投稿が1万5千件以上載せられていたり、「#マスク美人」や「#マスク女子」、「#マスクメイク特集」など、マスクメイアップク関連の投稿が数多く見られ、メイク製品やメイクの仕方についての情報交換が盛んにおこなわれています(2020年7月3日現在)。

マスクメイクアップには目回りが重要!

さて、マスクを着けている人と会話をするとき、どこに目がいきますか?マスクを着けていると、顔の下半分、頬から口元がマスクで隠れてしまうため、顔の上部を見ますよね。そこで、マスクメイクアップでは、唯一露出されている部位である、目回りのメイク(アイメイク)をきっちり仕上げる必要があります。アイメイクにポイントを置いたメイクアップというと、2000~2008年前後に流行った「ギャル文化」に端を発する「囲み目メイク」や「目力」・「デカ目」メイクがあったのですが 、コロナ禍のマスクメイクアップにおいては、以前のような「目を強調するアイメイク」とは少し違ったものになっているように見受けられます。

過去に流行った「目を強調するアイメイク」は、「(単に)いかに目を大きく見せるか」という点にメイクの目的があって、アイラインやマスカラを駆使したり、アイシャドウでくっきりと陰影をつけたりすることによって表現されていました。それが、2020年のマスクメイクアップでは、「すっぴん感をなくし、目元の印象を良くしたい」というニーズに焦点がおかれているようになっています。したがって、過度に「目を大きく見せるため」というのではなく、「きっちりとメイクをしていますよ」という社会的態度を表現しようとしているのです。

マスクを着けると、口元が隠されてしまうので、どうしても目元のみで表情を作り出さないといけません。「目は口程に物を言う」とも言いますが、特にマスクメイクアップで過去の「アイメイク」と異なる点は、眉メイクの重要性です。前髪の髪型にもよりますが、眉が前髪で隠れていない限り、眉メイクがあるかないか、による印象の差は大きいものです。普段のメイクアップでも、「眉」は「顔の額縁」とも言われ、顔の印象を決定づける部位でもあります。また、もっと極端に言えば、マスクメイクアップでは、アイシャドウもマスカラもアイラインもなくても、眉メイクさえきっちりしていれば、外出するのに問題はないと思う人も少なくないでしょう。

マスクメイクアップの眉メイクでは、「目元の印象を良くしたい」というニーズがもとになっているので、いわゆる「流行の眉の形」というものを意識したメイクでなくても構わないでしょう。それよりも、自眉の形と長さを整え、左右対称に描く、という基本的なメイク技術で十分だと思います。

以前、勤めていた企業の消費者調査で、「無人島に1つだけ、化粧品を持っていけるとしたら、何を持っていきますか?」という質問を何度か行ったことがあるのですが、毎回、最も多く答えられたのは「アイブロウペンシル」・「アイブロウライナー」など、眉メイク用の製品でした。(このような質問は、消費者の意識の中の製品の重要度・優先順位を探る質問として、よく用いられます)アイブロウペンシルやアイブロウライナーは、アイシャドウやリップカラー製品のように、何色も複数個、持つものではありませんし、一つ持っていると、使い切るまで時間がかかるので、市場規模自体はメイクアップ製品の中では小さいアイテムなのですが、消費者にとっての「マストアイテム(必需品)度合い」としては、非常に高い、重要な製品となっていることが分かります。

マスクメイクアップならではのメイクニーズとは

この「きっちりメイク感」の表現は、主婦層・OL層ともに安定したニーズですが、学生層やOL層の中には、マスクメイクアップだからこそ「これまでとは違ったアイメイクを楽しみたい」というニーズも一方にあるのではないでしょうか。

普段のメイクアップでは、アイメイクとチーク、リップメイクなどとのトータルのカラーバランスを考える必要があります。また、どこにポイントをおくか、という点も考える必要がありますので、忙しい朝の時間にとって、考える点が多いことは面倒くさいことです。でも、マスクメイクアップの場合は、主に見えている部分が「目元・目回り」のみなので、普段、なかなか使っていなかった新しい色のアイシャドウやアイラインにも、カラーバランスを考えることなく、挑戦しやすいと思います。発色のバリエーションに加えて、キラキラしたラメ感や、濡れたようなツヤ感をプラスしてみたり、夏に向けた清涼感のあるアイメイクアップを楽しむのも、この時期ならではのメイクアップの楽しみ方だといえるでしょう。

以上、2回にわたって「マスクメイクアップ」についてまとめてみました。景気が上向くと、女性たちの口紅の色が赤く、鮮やかになる傾向があると言われています。いつか女性たちがマスクを外し、お気に入りの鮮やかなリップスティックをつけて街を歩き回れる日が早く訪れることを切に願います。

次回は「Withマスク・ビューティー:スキンケア編」に移りたいと思います。

経営学部では、このように消費者のニーズの変化を探ったり、そのような変化による企業の動向などを仮説を立てながら考える演習を行っています。興味を持たれた方は、学生を交えた産学連携も行っていますので、ぜひお声をおかけください。また、受験生の方は、ぜひオープンキャンパスや入試相談会にお越しください。

【筆者プロフィール】
外資系企業に23年間勤め、うち12年間をフランス系化粧品企業のアジアイノベーションセンターやリサーチ&イノベーションセンター イノベーション本部にて、日本・韓国・中国の消費者のニーズやビューティートレンドを調査・分析し、化粧品(スキンケア・メイクアップ・ヘアケア・ヘアカラー)のグローバル製品開発に携わる経験を持つ。経営学修士。

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