• 2026/01/27

    山下 紗矢佳

「人を大切にする経営」を実践する企業とは

日本の中小企業の中には、大企業以上に「人を大切にする経営」に取り組んでいる企業がたくさんあります。今回は、「人を大切にする経営」を実践する株式会社栄水化学の取り組みや栄水化学のような「人を大切にする経営」を実践する企業の見つけ方などについて紹介します。

栄水化学の「人を大切にする経営」

尼崎に本社を構える株式会社栄水化学は、ビルメンテナンスを手掛ける企業です。100人を超える従業員の約8割がパートスタッフで、シニアや障がい者の皆さんが働いています。清掃スタッフは「アンカーさん」と呼ばれ、錨のように組織を支え、リレーの最終走者のように信頼を託される存在として位置づけられています。こうしたアンカーさんたちが誇りを持って働けるよう工夫された社内制度や仕組み、経営哲学が随所に散りばめられています。

例えば、現場の清掃スタッフが顧客から旅のお土産におまんじゅうを1個もらうと、それを会社に報告して記録を共有します。こうした徹底した「報連相」が、清掃スタッフ間や会社内の一体感はもちろん、顧客からの信頼を育みます。加えて、パートスタッフが多いアンカーさんを支えるため、全員に健康診断や定期面談を実施し、年齢や体力に応じた配置や勤務時間の調整、充実した定期研修や交流の場など、働く人が安心して能力を発揮できる環境づくりにも取り組み、長期的に高い定着率を保つ職場をつくりだしています。

こうした取り組みが評価され、栄水化学は「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞を受賞しました。この賞は、従業員や顧客、地域を大切にする企業を顕彰する制度で、背景には「日本でいちばん大切にしたい会社」著者である坂本光司先生が提唱する「人を大切にする経営」があります。これは、利潤追求よりも社員や顧客の幸せを成果と見なす考え方です。2024年には、一般社団法人人を大切にする経営学会が設立され、その理念は学術的にも広がりを見せています。現在は、「人を大切にする経営」を科学的に検証し、人を中心に据えた経営が持続可能性の鍵になることを発信しています。

日本企業は「人を大切にする経営」に回帰すべき

企業経営を成長や持続可能性といった観点から見た場合、社員や顧客といった「人」を大切にすることが、経営数字や戦略と同じぐらい重要なのは何となく理解できると思います。それでも、企業の多くが「人」よりも経営数字や戦略を重視してしまいがちです。

なぜならリストラや経費節減といった経営数字や戦略的な取り組みの方が短期で目に見える成果を得やすい一方、人材育成やモチベーション向上のような「人を大切にする経営」は、長期的に取り組まないと成果を実感できません。しかしリストラや経費節減は、短期的な経営数字の改善につながりますが、長期的には優秀な人材の流出などを招いて企業に悪い影響を与える可能性があります。

日本企業はもともと終身雇用制度により、中長期的視野に立った「人を大切にする経営」に取り組んでいましたが、バブル崩壊によりアメリカ型の短期的な成果を重視する経営手法が広がりました。時代が変化し、多様性の重視や人材不足が叫ばれつつある今、企業は「人を大切にする経営」を経営の軸に据え、中長期的な視野を持った経営に立ち帰るべき時だと考えます。

本音のコミュニケーションで企業の真の姿を知る

人手不足や経済不安が続く今、企業の存在意義が厳しく問われています。その中で、栄水化学のような社員や顧客の幸せを重視した「人を大切にする経営」に取り組む中小企業は少なからず存在します。しかし、その多くがまだ社会に知られていないのも事実です。もしあなたが、小さいながらも素晴らしい企業に就職したいと考えるなら、まずは該当する企業を見つけなければなりません。それにはまず「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞のような表彰制度に注目しましょう。

しかし、就職活動本番となる企業見学や説明会では、たとえ素晴らしい企業であっても本音を見せる場面は限られます。そこで私は学生たちに、実践学習などの授業やインターンを通じてその企業と接触し、本音のコミュニケーションで企業の真の姿を見極めるよう伝えています。私が担当する授業でも、企業経営者や経営支援を行う人に講師を務めてもらったり、ゼミでは企業訪問やコラボプロジェクトに取り組むなど、企業や企業経営に携わる人たちと本音でコミュニケーションできる機会を増やしています。

リアルな経験に基づいて企業を見極めよう

社会から必要とされる企業に就職し、戦力として活躍できる人材になりたいと考える高校生や大学生の皆さんは、日頃からさまざまな情報を収集し、それを自分の足や目を使って真実かどうかを確かめましょう。あなたの目で見たことやあなた自身が感じた感覚こそが、一番正しくて信じるべき情報です。もちろんインターネット上の情報を無視する必要はありませんが、数ある意見のひとつという程度に捉えておけば良いと思います。

これらに加え、思い込みを持たずに自由に生き、ステレオタイプな人間にならないことが大切です。リアルな経験で感じたことを信じ、社会で活躍できる人材となることをめざしましょう。

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