• 2025/06/27

    岸本 義之

「経営環境論」って何?

私の担当科目の一つに「経営環境論」という科目があります。
「環境」という言葉は、自然環境や地球環境という意味だけとは限りません。自分たちを「取り巻く」外部的なものはすべて「環境」と呼びます。なので、職場環境や通信環境という表現も存在しているのです。ここでの「経営環境」とは、企業経営を取り巻くさまざまな要因という意味で使っています。

長期間続くような社会課題も、いつかは解決される

「経営環境論」の授業では、「意外と世の中は明るくなっていく」ことや「自分の未来を切り開くのは自分である」ことを示しています。若い人ほど、自分次第で自分の未来は明るくなっていきますし、世の中を明るくしていけるかもしれません。しかし、例えば「地球温暖化が進んだのはビジネスが発展しすぎたせいだ」などと、学校の先生や周囲の大人たちから未来に関するネガティブな意見を聞かされると、明るい希望を持てなくなるでしょう。その一方で、地球温暖化を防ぐための技術を開発して大きなビジネスにしようという企業や起業家も多く出てきています。つまり社会課題を解決しつつ自社も利益を上げていけるということです。実際に世界全体に影響を及ぼすような社会課題(すなわちビジネスチャンスの種)はたくさん存在しています。「経営環境論」の授業では、その中でも10の大きな社会課題に注目し、解説や考察を加えていきます。
これらの社会課題は、今後30年、40年続くことが想定されているものばかり。でも心配には及びません。いずれ人類はこれらの課題を解決できるはずです。なぜなら資本主義社会では、課題を解決してビジネスチャンスを得ようとする人が必ずでてくるからです。昔は先進国だけがこうした解決に取り組んでいましたが、今は新興国でビジネス機会を狙う人も大勢いるので、課題解決に取り組む人の数が昔よりも何倍も増えています。課題解決に取り組む人が増えれば、解決の確率も当然上がります。さらにAIなどの技術的な進歩もあるので、社会課題の解決はより容易になっているのです。

10の社会課題(メガトレンド)

経営環境論で紹介する10の社会課題(メガトレンド)を紹介しておきましょう。

1)地球温暖化と環境問題
2)有限な天然資源をどう活かすのか
3)人口問題と少子化・高齢化
4)移民とメガシティ化という人口移動
5)所得格差は解消するのか
6)ビジネスのグローバル化がさらに進む
7)国家間のパワーシフトが進む
8)個人へのパワーシフトが進む
9)ライフスタイルの多様化が進む
10)生産性向上と省人化

これら10の社会課題の中には大小さまざまな課題が含まれていますが、これらは長期的に「追い風の吹く分野」でもあります。なにしろ世界中の人々が今後数十年も対処し続けなければいけない、「大きな困りごと」なのです。
例えば、「9)ライフスタイルの多様化」という社会課題の中の一つとして、「女性の社会進出がなかなか進まない」という問題がありますが、この解決にはワーキングマザー向けの便利な買い物の手段を提供するというビジネスを起こすことなどが求められます。社会課題を解決する手段は、「技術革新」だけではないのです。地球温暖化や新規エネルギーとなると、さすがに技術抜きでの解決は難しいですが、ワーキングマザーの買い物問題のように、特別な技術を使わずに解決できる課題も数多く存在するのです。
10の社会課題の中には、時代を反映した「旬の課題」も存在します。例えば、先ほど述べた女性の社会進出は、現代の日本社会では国家ぐるみの目標として掲げられていますが、まだ日本の社会概念や仕組みは専業主婦ありきの時代を引きずっていると言えるでしょう。こうした問題点を「嘆く」のではなく、「ビジネスチャンスだ」ととらえれば、未来は明るく見えてきます。

10の社会課題解決には女性の視点が重要な項目も

10の社会課題は、人類がいずれ解決できるものですが、簡単ではありません。しかし、解決する技術やビジネスモデルを開発、構築できる企業なら、長期的なビジネスチャンスに恵まれることになります。ビジネスチャンスには大小さまざまなものがありますから、個人のビジネスとして立ち上げられるものもあります。
先ほど紹介した「9)ライフスタイルの多様化が進む」などは、女性の視点が革新的な解決法を見出せる可能性が高そうです。さらに「8)個人へのパワーシフトが進む」に関しては、いまやマス広告で消費者をコントロールできた時代ではなくなっていいて、口コミやレビューが重視されるようになっています。つまり「売り込み方」ではなく、「買われ方」をきちんと理解することが決め手となる時代に変化しているのです。男性に比べて強い購買決定力を持つことが多い女性の発想や視点がこれまで以上に尊重されるでしょう。

「時代の風」を感じ、見極められる人材に

もし将来のビジネスチャンスを見つけようという気持ちがなくても、いま世の中で起きている大きな流れを理解しておくことは重要です。ニュースを見る際も、その裏側にある大きな流れがわかっていると、見え方が違ってきます。もちろん就職活動をする際も、どの分野や企業が将来的にビジネスチャンスをつかめそうか、判断の材料になるでしょう。
高校生や大学生の皆さんが、将来、社会に出て、社会課題解決のヒントを見つけられる人材となることをめざすなら、「時代の風」を意識して日々を過ごすことが有効です。世の中には、追い風が吹く分野と向かい風が吹く分野がありますが、追い風が吹く分野とは、社会課題のいずれかを解決できそうな場所ということです。歴史がある有名企業だから常に追い風が吹く場所にいるとは限りません。むしろ、昔は追い風だったのに今は向かい風という場所にいるのかもしれません。将来の就職活動では、その企業が社会課題の解決を通じて、世の中の発展やビジネスに貢献できる「追い風が吹く場所にいる企業」かどうかを見極めることが重要です。なぜならそれが、未来のあなた自身の成長に大きな影響を与えるからです。
「経営環境論」の授業には、「追い風が吹く分野」をいち早く見つけるためのヒントがあります。武庫川女子大学経営学部の「経営環境論」の授業でお会いできるのを楽しみにしています。

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