今も昔も、大学生にとっての大きなイベントのひとつに「就職活動」があります。「就職活動」は、内定を獲得するためには避けて通れない活動です。筆記試験や面接試験の関門を突破しなければならない気の重い活動とも言えますが、今も昔も大学生にとっての一大事であることには変わりありません。
そこで、大学生の「就職活動」のはじめ時や、企業や職業の選び方などについて考えてみたいと思います。
実質的な就職活動スタートは3年生夏休みから!
政府による「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」によると、企業の採用に関しては、説明会などの広報活動は大学3年生の3月1日以降、面接などの採用選考活動は4年生の6月1日以降、内定日は4年生の10月1日以降が原則ルールとなっています。
しかし最近は「就職活動は3年生の夏休みに『インターンシップ』に参加することから始まる」と考えるのが主流になっています。こう考える主な理由は、インターンシップからの内定者が確実に増えているからです。実際にリクルート社の調査(就職白書2024)では、「採用選考とインターンシップに関係があった」と回答した企業が約8割に達しています。特に早期選考を行う企業の多くは、3年生の夏休みに参加するインターンシップを事実上の採用選考の場として認識しているようです。これにより、3年生の12月や1月に「内々定通知」が出されるケースも増えています。
インターンシップの開催スタイルも大きくふたつに分かれており、半日や1日などの短期型と、5日以上の長期型があります。短期型は、近年「オープンカンパニー」と呼ばれています。
企業と学生、双方にメリットとデメリットがある
事実上、3年生の夏休みのインターンシップから始まっている現在の就職活動について、企業と学生、双方にとってのメリットやデメリットを考えてみます。
まず企業にとってのメリットは、いち早く優秀な学生と接触できることです。人材不足が叫ばれる昨今だけに、企業間で優秀な学生の争奪戦が繰り広げられています。そのため、いち早く学生と接触して実質的な採用活動が行えるのは大きなメリットです。
逆に、いち早く3年生の12月に内々定を出しても正式な内定日は4年生の10月1日ですから、約10カ月間、内々定を辞退させることなく、内定までつなぎ止める必要があります。この「つなぎ止め」が難しい点はデメリットと言えるでしょう。
次に学生にとってのメリットは、インターンシップに参加することでその業界や企業をより知ることができる点です。特にオンラインではなく社内で実施されるリアルなインターンシップは、社内や社員のよりリアルな日常の雰囲気を感じることができ、ミスマッチの可能性を減らせるでしょうし、就活について情報交換できる他大学の学生と知り合う機会にもなります。
逆に、就活期間が延びるのは肉体的、精神的な負担が大きくなりますし、学生生活を楽しむ時間が減る可能性があるのは、デメリットと言えるでしょう。
自分の就職や未来のヒントは日常生活の中にある
3年生の夏休みのインターンシップから実質的な就職活動が始まるなら、それまで就職や自身の将来について考える必要はないと考える学生もいるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。
私は違うと考えます。なぜなら普段の生活が、直接的、間接的に、将来の職業選びの糧になると考えるからです。
また、キャリアの研究者、ジョン・クランボルツは、「個人のキャリアの8割は、予想しない偶発的なできごとによって決定される」と言っています。
例えば、偶然出会った人の仕事に興味を持ったり、偶然読んだ本や観た映画で描かれた仕事やテレビ番組などで取りあげられていた仕事に惹かれたり、授業で扱った企業に魅力を感じたり、さらにはアルバイト先の店舗や他大学の友人経由で知った企業や業界に興味を持ったりと、これらは十分に起こり得ることです。
人生の中で無駄な経験などひとつもない
クランボルツは、「偶然のできごとをチャンスに変えるためには、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心といったスキルが必要」とも言っています。
この言葉を私なら「食わず嫌いをせずに、色々なことにチャレンジしよう」と解釈します。つまりは、直接「就職活動」とは関係が無さそうでも、高校生や大学1〜2年生の間にさまざまなことにチャレンジしたり経験することが、将来の職業選びに役立つというものです。確かに今の若い人たちは、タイパやコスパを重視するあまり、一見無駄と思えるような経験を得ようとしません。しかし、実際の人生においては無駄な経験など皆無で、あらゆる経験や失敗すらも後の人生に生きてきます。しかも、社会人になってから幅広い経験をしようとしてもなかなか難しいのが現実です。
また、高校生の皆さんから「大学進学が決まってから入学するまでの期間に、しておいた方が良いことはありますか?」と聞かれることがあります。そうした時は「本をたくさん読んでください」と答えています。本はインターネットよりも情報の偏りが少なく、読むことで擬似的な体験ができますから。もちろん大学生の皆さんも多くの本を読むことをおすすめします。同様の理由で、より多くの人と会い、さまざまなことにチャレンジすることもおすすめです。こうした行動の積み重ねは、就職活動にプラスになるだけではなく、自身の人生観や職業観を育むことにも役立つでしょう。
将来、就職活動が待ち構えている人たちには、さまざまなことに挑戦したり、より多くの本を読んだりしながら、偶然のできごとをチャンスに変え、自分に合う職業を見つけてほしいと願っています。