現在、武庫川女子大学と武庫川女子大学附属高等学校の高大連携に取り組んでおり、その中で生徒自らが課題を設定し、解決に向けて情報を収集・整理・分析したり、周囲の人と意見交換・協働したりしながら進めていく学習活動「探究学習」を進めています。今回は、「産学連携による高大連携探究学習プログラム」の現状や今後の展望などについて考えます。
大学のリアルな学びを高校生の間に体感できる
高大連携とは、高校と大学の教育をつなげるもので、大学入学後に起きがちな「学びのミスマッチ」を減らすという目的があります。それに加えて、高大連携により高等学校教育と大学教育や入試をより密接に連携させることで、多様な学力や能力を正しく評価できる教育制度をめざす取り組みのひとつ、と私は考えています。
例えば、高校生の皆さんが事前に大学の「学び」について知ろうとしたとき、大学が主催するオープンキャンパスに足を運んだり、大学のホームページを見たり、周囲にいる大学生に話を聞いたりするのが主な方法ではないでしょうか。しかし、よりリアルに大学での学びを知りたいと考えるなら、自ら体験することに勝るものはありません。高校生の皆さんは、高大連携の授業を通じて大学の「リアルな学び」を体験することで、自らが求める学びが大学で得られるかどうかを確認したり、実践的な学習の中で社会人として活躍するのに必要な知識やスキルに触れることができるのです。
企業担当者自身による実践的な講義から得る学び
武庫川女子大学経営学部と武庫川女子大学附属高等学校の「産学連携による高大連携探究学習プログラム」では、大手企業の社員の皆さまによる実践的な講義、さらには講義内容を踏まえたワークショップや実際に現場に赴いての見学や実践的な実習などを通じて、サステナビリティ意識の醸成ならびに将来のサステナビリティ人材育成に取り組んできました。ここでは実際にいくつかの企業さまと取り組んだ内容を紹介します。
大手コンビニ企業さまの講義では、企業のサステナビリティへの取り組みの現状などを紹介していただいたあと、実際に新入社員研修で行うのとほぼ変わらない内容のワークショップを高校生たちに取り組んでもらいました。
大手人材ビジネス企業さまの講義では、多様な人材を誘致することで地方を創成するというロールモデルを構築し、将来的には全国展開をめざすというお話をうかがいました。また、実際にコロナ禍で自らの能力を発揮できない環境下にある全国各地の人材を集め、能力を発揮してもらう場をつくるプロジェクトの現場を見学し、現場の学びと講義の学びをリンクさせる取り組みを行いました。
大手ファーストフード企業さまの講義では、安心で美味しい食事を提供するための取り組みや地域をサポートする活動などの社会貢献活動を学びました。さらに、店舗で実施されたチャリティ活動に参加し、実際の社会貢献活動に参画する機会もいただきました。
大手飲料メーカーさまの講義では、サステナブルな生活の実現に寄与すべく取り組んでいるサステナビリティ活動を学びました。アルコールの有無に関係なく、自分らしい飲み方で時間を楽しめる世界を創造するための目標を達成するための取り組みなどについて学びました。
実践的な学びが未来へのモチベーションとなる
「産学連携による高大連携探究学習プログラム」に取り組む中で、今後さらに高大連携探究学習プログラムが進化していくために乗り越えるべき壁も見えてきました。
例えば、自ら問いを立てて答えを探し求めるために情報収集したり意見交換したり協働したりしながら学びを深めていくという探究学習の手法についてや、高大連携に関する知見を備えた先生が少なく、実施するまでのプロセスやイメージを共有するだけでも簡単ではありません。具体的な例を挙げると、高校と大学の時間割はまったく異なるため、実際に講義を実施する時間調整ひとつとっても、従来の学習カリキュラムを高校、大学の双方で調整しつつ、講義の実施に向けて調整していくことになります。
しかしながら、高校生の皆さんにとっては、サステナビリティに関するリアルな話を企業担当者から直接聞ける貴重な機会であることは間違いありません。高校の通常授業で得られる学びとはまったく異なる学びを得ることができますし、高校生の間にいち早く大学の学びを体感することは、大学進学へ向けた学習モチベーションを高めるでしょう。さらには、将来自分が取り組みたい仕事や目標を定めるきっかけになる可能性も大きいでしょう。
高校生の間に大学の学びに触れる「産学連携による高大連携探究学習プログラム」は、大学選びや学部選びはもちろんのこと、将来の就職先選びのミスマッチを減らすことにもつながると考えます。また近年は、たとえ大学新卒採用であっても即戦力を求める傾向が強まっています。いち早く高校生の間に企業で働く人々から、直接リアルかつ実践的な学びを得る機会があることは、将来の大学生活をより充実させ、就職活動や社会人として働く上でも大きな力になるでしょう。