• 2022/06/23

    岸本 義之

日本で女性が活躍しなくてはいけない3つの理由

近年、さまざまなメディアで「女性活躍」というキーワードが頻繁に使われるようになってきました。これはなぜなのでしょう。まず思いつくのが「男女平等は当然の権利に由来するものだから」というものです。実際に憲法第24条には「両性の本質的平等」が規定されています。しかしそれだけが理由なら、70年以上前に女性活躍が実現していたはずで、今になって女性活躍が叫ばれることもなかったでしょう。
今回は、女性活躍が声高に叫ばれる本当の理由と、それに加えて、若い世代の女性がどう行動すべきかも考えてみようと思います。

日本の社会福祉維持には女性の社会進出が必須

まずは「なぜ最近になって女性活躍が声高に叫ばれるようになったか」の本当の理由からお伝えしましょう。理由は3つあります。まずひとつ目の理由は「少子化が進行して、若年人口が減少したため、女性が活躍しないといけなくなったから」です。

1980年に「18歳から64歳の人口」は「65歳以上の人口」の7.4倍もいましたが、2020年にこの比率は2.0倍にまで低下しました。1980年頃はまだ女性活躍がほとんどなく多くの女性が専業主婦だったことを考えると、当時の現役世代は男性中心と考えられるので、7.4倍ではなくその半分(男性のみ)の3.7倍の方がリアルな数字かもしれません。つまり、3.7人の現役労働者の年金や保険料で、1人の高齢者を支えていたことになります。

これを現代社会に当てはめた場合、女性活躍がないままなら現役世代は男性であり、今の比率は2.0倍ではなく1.0倍となってしまいます。つまり、現役男性1人が納める年金や保険料で1人の高齢者を支える構造になってしまいます。3.7倍が1.0倍に下がると大幅な低下ですが、現役世代の女性も働いて支えてくれれば1.0倍ではなく2.0倍となり、3.7倍だったものが2.0倍に下がるのですから、状況がかなり改善しますね。

最近も日本政府が上場企業に「女性管理職比率を年一回公表する」とことを義務付ける法案を作るというニュースがありました。政府が大々的に女性活躍をテーマに掲げるのは、女性の権利を守ろうという博愛的な考えと言うよりは、女性が働き続けてくれれば「年金や保険料を払う人口を2倍にできる」という現実的な要請からなのです。

企業も、女性が働きやすくならないと生き残れない

ふたつめの理由は「高齢者が大量に定年になり、企業の人手不足が深刻になったから」です。

現在の40歳前後の世代は、2000年ごろに深刻な就職氷河期を経験しました。この20年で経済はあまり成長していないのですから、今も就職は厳しいはずと多くの若者が感じているでしょう。しかし、今の20歳代は1学年あたり120万人程度しか生まれていません。対して団塊の世代(今は75歳前後)は1学年あたり200万人以上も生まれていました。この団塊の世代はすでに定年退職していますが、彼らがまだ大量に現役だったころに就職氷河期が発生し、それ以降の日本企業は新卒採用を絞り込んでいたので30〜40歳代の層が薄くなっています。そこで若手を増やそうとするのですが、20歳代は人口が少ないので、若い人材は熾烈な奪い合いとなっています。そのため企業は、優秀な若者であれば男女関係なく積極採用しています。

さらに言うと、せっかく採用した優秀な女性社員が出産や育児で退職することは、会社にとって大きな損失です。先見の明がある企業は、産休・育休制度やフレックスタイム、リモートワークの充実など、女性が活躍できる環境づくり取り組んでいますが、これも博愛精神というよりは、優秀な人材を確保・育成したいという切実な必要性によるものなのです。

世帯収入確保のため「共働き」が当然の世界に

3つめの理由は「給料が下がり、1人の働き手では家計を支えられないから」です。

日本の平均年間賃金は、2000年から4万ドル前後のまま横ばいであり、ついに韓国に抜かれました。直近20年間で日本の労働者の平均年齢は上がっているわけですから、実質的には給料は下がっていると言えます。20年前の40歳がもらっていた給与を今の40歳はもらえていないのです。このままだと、さらに20年後の40歳は今の40歳よりももらえていないかもしれません。2000年頃までは父親1人の収入で一家の家計を支えられていましたが、今では共働きでなければ一家の家計は支えられません。せっかく能力を身につけた女性が家庭にこもっているのは本人も不満でしょうが、家計にとっても問題なのです

こうした状況下で変わるべきは、女性ではなく男性です。いまのまま女性活躍が進行すると、女性にさらに大きな負担が掛かります。「男性社員が早く家に帰ろうとしないのは、忙しいことを口実にして、家事を手伝いたくないから」や「テレワークが欧米のように定着しないのは、家にいると男性が家事をしないといけなくなるから」などと揶揄する人もいますが、そんな考えや行動のままの男性は、家にも職場にも居場所のない人になっていくでしょう。

「チャレンジ精神」を身につけて社会を変える人材になる!

ここまで、3つの女性活躍が叫ばれる本当の理由を見てきました。国も企業も家計も、女性が働き続けてくれないと本当に困ることがおわかりいただけたでしょうか。建前としての「男女平等」ではなく、もっと深刻な理由で女性活躍は推進されています。もはや「女性が活躍しなくてはいけない時代」なのです。もちろん活躍したくなければ、のんびり働くことも自由です。どちらを選ぶかは一人ひとりが決めることです。

今後、各企業の女性管理職比率の開示が義務づけられると、女性管理職を増やすために、若くして抜擢される女性が増加するでしょう。逆に、男性でも優秀な社員は抜擢してあげないと不平等になります。こうして日本企業の年功序列社会は崩れていくでしょう。いろいろ言い訳を並べて女性活躍に消極的な態度をとり続けるような企業には、良い人材が集まりにくくなり、衰退の一途を辿ることになるでしょう。

こうやって大きく変化していく社会に飛び込むことになる女子学生の皆さんが身につけるべきは「チャレンジ精神」です。男性中心の社会は体育会系のノリが強く、先輩たちから続く風習が同調圧力となって前例踏襲から抜け出せません。おかしな風習には「なぜ?」という疑問をもち、賛同してくれる仲間とともに、前向きな提案を行うなど、新しいことに挑戦する力を身につけましょう。何しろ日本社会は大きく変わらないといけません。職場も家庭も変わらないといけません。「なぜ?」と疑問を呈することで問題のありかが明らかになり、それが身の回りや社会の問題解決につながっていくのです。

そうやって身の回りの問題を解決していけば、職場環境も改善し、職場の生産性も改善し、提案したアイディアが実を結び、「あの人は育休明けにはぜひうちの部署に引っ張りたい」と言われる人になるのです。

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